──そうしたコンセプトの再考は、作品にどう影響を与えましたか?
「スーパーラット」は単体の作品ではなく、今はChim↑Pomの活動全体のコンセプトになっています。例えば、日本のカラスは他のどの国にいるカラスよりもずっと大きくて好奇心が旺盛です。
ゴミを食べ、害獣として駆除されながら、スーパーラットと同じように、街で生き残るために、より賢く進化したんです。
僕たちはカラスとのコミュニケーション方法を考えた末に、カラスの鳴き声を録音し、メガホンで鳴らしながら、カラスの剥製を手に車やバイクで街を走る作品を作りました。
賢く進化したカラスは仲間意識を持っているので、仲間が捕まったと思ってどんどん増えながら、僕らを追いかけてきます。
ただ、ほんとに彼らは賢いので、同じことを繰り返すと、それがChim↑Pomの仕業であることに気付き始めます。だから彼らが飽きないように、追い続けてもらえるようにスピードを上げていきました。
こうしてカラスを引き連れて都内の様々な場所を訪れ、ビデオ作品にしたのが、《BLACK OF DEATH》です。
アートの伝統的な制作方法ではなく、ラットもカラスも独自の方法で作りました。
《BLACK OF DEATH》2007 ビデオ(9’ 13")、ラムダプリント 117.5 x 78.5 cm Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production
──動物や社会状況を操作することで、具体的に何かを表現しようとしているのでしょうか? 人間の本性を表現しているようにも見えるのですが……。
そうとも言えると思いますが、僕たちは、特に社会状況に対するアクティビスト的なメッセージを伝えようとした事はありません。
方法論やリサーチは毎回凝りに凝るので、探求の末に作られた作品が、結果的に多くのコンセプトを含むという事は意識したいと考えています。が、一番は多分、新作を実現する事で、自分たちの限界に挑戦し続けるという事かもしれませんね。
同時に世間からのリアクションも多いので、「世間」とは何なのかということも、ずっと問い続けているのかもしれません。
それは「公共」と言いかえても良いのですが、当時からの僕たちのインスピレーションの源の多くはストリートにあります。
──ストリートと言えば、エリイの結婚式については話題にせざるをえません。彼女は「公の場」で結婚式をしましたよね?
結婚とは何かを考えたら、それは二人の約束を契約し、「宣言」し、明らかにするという非常に「公的」な行為であることに気付いたのです。
だから、昔の村の風習などでは、きつねの嫁入りのように、道を練り歩いてお披露目をした。皇族の結婚もパレードを行いますよね。そう考えると、日本で披露宴を行うには、公道が一番“格式が高い”場所です。