ビジネス

2020.07.30

ペーパーレスが加速する時代に、筆記具の「ゼブラ」が見つけた未来

ゼブラ取締役 石川太郎(左)と吉田健太朗(右)


コロナ禍は課題を洗い出す良い機会に


──今回のコロナ禍で、事業や社内での働き方への影響はどんなものがありましたか?

まず事業への影響ですが、やはり人の動きの鈍化を受けて、店頭販売の売上は落ち込みました。筆記具を含む文房具はいろいろな流通経路で販売されていて、コンビニやドラッグストアなどにも商品が置いてあります。そのような店ではコロナ禍の影響を受けて、販売アイテムを食料品など生活必需品に寄せていく動きもあったので、文房具の棚スペースが減っていく傾向がありました。また、これからテレワークがさらに推奨されていくとなると、オフィスでの需要も減ってきます。

一方で、オンライン販売は継続的に伸びています。「ステイ・ホーム」で子供たちが家にいる時間が増えたことで、お絵描き用の画用紙がたくさん売れたことが話題になりましたが、それに引っ張られる形で弊社のカラーペンも売れ、意外な特需がありました。嗜好品としての筆記具の価値が、新たに見直されることになったと捉えています。

筆記具は、個人向けもオフィス向けも、コロナ禍の前からオンライン販売が伸びていましたが、今回、その動きが一気に加速し「消費者の買い場が変化している」ことが如実に感じられました。このシフトの結果として、文房具需要が縮小するのか、それとも嗜好品としての伸びなどで、全体として持ち堪えるのかは、これはもう少し時間が経過すると明らかになってくると思います。

──社内の働き方の変化はどうでしょうか?

弊社でも、本社や全国の営業所で「出勤7割削減」を実施しました。営業や事務は、出勤を減らしてもテレワークで仕事は回っています。ただ製造業ですので、どうしても工場での生産そのものはリモートで実施できない部分もあります。それでも、今回のコロナ禍をきっかけに、あらためて工場内での無駄な作業を見直す動きにつなげることができたので、課題を洗い出す良い機会になりました。

海外では、事情はまた少し異なります。メキシコに工場があるのですが、こちらはロックダウンになってしまい、運営を完全に止めました。またロックダウンになっていない国でも、地元住民から「このような時期に営利目的で、密になって作業を続けるのはいかがなものか」と声が上がったりしました。

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コロナ禍に関しての海外の動きで興味深いと感じたのは、中国での売上が、感染が拡大する間も落ち込むことなく、継続的に伸び続けたことです。これは元々オンラインで購入する層の割合が多かったからだと見ています。中国は新しいものに飛びつく傾向がとても強く、だからこそ、eコマースも日本以上に発展しているのですが、そういう国民性も理解しながら、グローバル戦略をあらためて練っていかなければならないと感じました。

──この先、コロナ禍が収束に向かっていった場合は、社内の働き方も元に戻っていきますか、それとも極力テレワークを続けるのでしょうか?

可能な限りテレワークは残したいと思っています。工場もそうですし、オフィスもそうなのですが、今回の働き方の変化は、業務の効率改善を見直す良いきっかけになったと思っています。会社の文化を壊さないように良い部分は残しつつも、必要な変化は、これからも進めていきたいと強く思っています。
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文=吉田健太朗 写真=原 哲也

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