恩送りと日本の将来に対する熱い想い
それから少しの時間が経過した頃、賀通の元にある人物が起業相談に訪れる。その人物は、実は以前、裕哲の元にも相談に行っていた。
「もしかした自分の所に起業の相談に来た人がIT関連の事業をやりたい場合、弟と一緒に支援することで上手く進むんじゃないか、そう考えたんです。弟も同じことを考えていたようで、『やってみようか』と一気に話が進みました」(裕哲)
そこで生まれたのがHandsOnの原型となるスタートアップスタジオのアイデアだ。この領域であれば2人が培ってきた経験やナレッジをフル活用できる。そして何より、「恩送り」をテーマに、自分たちが受けて来た恩を次の世代へと繋いでいくこともできる。
HandsOnの事業領域をスタートアップ支援に決めたのは、もう1つ別の理由もあった。
「自分たちが子どもだった頃、中野の家から新宿の副都心を眺めると毎月新しいビルが立っていた。世の中が急速に変わっていく様子を見てワクワクしたのを今でもよく覚えています。デパートに行っても、持っていないもの、見たことがないものばかりで毎回興奮していた。あの頃はみんなが同じような気持ちだったと思うんです。
今の日本はバブル崩壊以降沈んでしまっていて、今日より明日が良くなる感覚がなかなか持てない。僕らが幼い頃に見た楽しみな将来や世界の最前線で戦う日本企業を取り戻したい、そのためには本気でチャレンジする起業家こそが重要な鍵であり、その起業家へ自分たちの経験を繋いでいくことで後押ししたいと考えました」(裕哲)
恩送りと日本の将来に対する熱い想い──。それはハンズオーナーとして参画するメンバーに共通するものだ。
ハンズオーナーは自身の恩送りの内容をメンバーに共有する。新しいメンバーが加わる際には内部投票を行い、既存のオーナーが認める人のみが参画を許される。全員がそれぞれの恩送りについて共感しているからこそ、バックグラウンドや専門領域が全く異なるメンバー同士同じ思いでプロジェクトを進められるという。