3月1日に本格始動した「HandsOn」も大まかにくくればその1つに含まれるだろう。ただし同社は従来のスタートアップ・スタジオとは異なる、独自の思想と特徴を持つ専門家集団だ。
最大の特徴はエグジットを経験した起業家やスタートアップのCxO経験者を中心に、自ら修羅の道を経験してきた事業家たちがメンター役であるハンズオーナーとして参画していること。経営、デザイン、マーケティング、セールス、ブランディングなどスタートアップの成長に必要な領域を、自分たちの経験をフル活用しながら全方位でバックアップする。
ハンズオーナーにはリジョブ創業役員の高梨大輔、スタートアップに特化した企業のブランディング・パートナーのチカイケ秀夫、楽天の取締役常務執行役員を経験した安武弘晃などバラエティ豊かなメンバーが集結。ハンズオーナーの質こそがHandsOnの価値に直結するため、新規メンバーが就任する際には全員で内部投票をして決める。
この仕組みは支援先のスタートアップを決める際も同様だ。「2030年までに世界に通用するユニコーン企業を創出する」ことを本気で目指しているからこそ、支援するスタートアップもサポートするハンズオーナーも本気の人に限定している。
それにしても、業界も経歴もバラバラなハンズオーナー達が集うHandsOnはどのようにしてできあがったのか。それを語る上でキーワードになるのは、HandsOnのコアでありこのプロジェクトが生まれる理由にもなった「恩送り」という考え方だ。
きっかけは父親と叔父からの「遺言」
HandsOnを運営するハンズオンは2人の兄弟が2019年に立ち上げた。兄で代表取締役COOの中野裕哲は大手やベンチャー、会計事務所、コンサル会社にて、さまざまな職種を経験したのち独立。起業支援をライフワークとする多彩な専門家集団を束ね、多くの起業家を総合的に伴走支援している。
代表取締役CEOを務める弟の中野賀通は工業大学附属の高校に教員として4年ほど教壇に立った後、ダイレクトマーケティング領域のベンチャーでクラウド事業の立上げや、数々の国内大手企業のマーケティングのプロジェクトにPMとして従事。2015年1月に技術顧問先のテモナに加わり開発、事業、組織拡大に貢献し、2017年にマザーズ上場、2019年には東証1部への鞍替えも経験した。
2人はハンズオンで合流するまで、全くの別のキャリアを歩んできた。年齢が13歳離れていることもあり、幼少期の長い時間を共に過ごしてきたわけでもない。