「長続きするもう一つの大きな理由。それは、『戦わずして勝つ』とも言える立地戦略にある」と同書で語られている。
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大吉のある場所を想像してみるとよくわかる。同グループのお店はいわゆる駅前や繁華街の近くで見かけることはない。東京もすべて山手線の外にある。意図して、駅から離れた住宅街など競合がほとんどいない場所に出店しているのだ。好立地は家賃が高いのも関係しており、そもそも毎月の経費やランニングコストをおさえた小さな焼きとり屋のため、1日に20人のお客さんがくれば、経営が十分に成り立つつくりとなっている。だからこそ、ローカルな立地に積極的に進出しているのである。
「例えば、一見、人通りが少なく、飲食店が成立しなさそうでも、『地元に焼きとり屋ができたら嬉しい』という地域の人たちの声なき声が聞こえるような立地、つまり、潜在ニーズが存在する立地は全国各地にあります。そうした立地で、なおかつ、お客様が立ち寄りやすい路面店である、店頭に設置する看板がよく目立つ......などの諸条件をクリアした物件だけに、大吉は出店します」(書籍『“不滅”の小さなやきとり屋』より)
この見極めは40年の実績をほこる大吉グループならではと言える。誰かにとって二等地、三等地であっても、「やきとり大吉」には当てはまらない。どこか“地元のやきとり屋”というイメージがあったのもこのせいだ。
2020年は新型コロナウイルスの影響により、飲食店の位置づけが変わるという大きな波がやってきた。この大波をどう乗りこなすのか、地元ならではのお店の出方が気になるところだ。
連載:日常生活のイノベーションを考える
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