日常生活のイノベーションを考える

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AIを導入した大手居酒屋チェーン店では、各店舗の業績とリピート率の相関関係をデータから分析している。仕入れ量を調整したり、価格を改定したりと、店長の感覚ではなく事実に基づいた店舗経営が導入されつつある。そうでなくても、タッチパネルの設置は、居酒屋チェーン店で一般化され始めている。

人間の仕事が見えにくくなる中、あえて「人間味ある店づくり」にこだわっているのが、「やきとり大吉」だ。なんとなく“地元のやきとり屋”のイメージがある居酒屋だが、あえて郊外に進出するなど、その戦略は緻密だ。25年以上も「やきとり大吉」を経営している店主が100人を超えるという、この地元のチェーン店の秘密を探った。

効率的なシステムの確立


「やきとり大吉」の店舗名で全国展開するのは、大阪市中央区南船場に本社をおくダイキチシステム株式会社だ。「やきとり大吉」の特徴といえば、どの店舗も10坪程度の比較的小さいものばかり。内装は鉄道の枕木が再利用されている。1カ所で大量に仕込める効率的なセントラルキッチンスタイルは導入せず、仕入れをはじめ一部のメニュー構成、やきとりのたれ作りなどは店主が責任をもって行う。また、ロイヤリティを固定し、店主の独立を応援するかたちでチェーン展開を行う(店舗を借り受ける形で、最低開業資金150万円があれば独立開業が可能)。

一等地にあったおしゃれな飲食店が、人気があるように見えたのにいつの間にか閉店となっていることは珍しく無い。こと飲食業界では、「開業から2年で5割が潰れる」「10年続く店は1割しかない」というのが通説だ。それほど継続が難しい世界なのだ。しかし、大吉は約700ある店舗のうち約8割の500人を超える店主が10年以上お店を続け、盛業を続けているのだ。10坪程度の小さな店......「実はそれだけの理由」だと書籍『“不滅”の小さなやきとり屋』で明かされている。

『戦わずして勝つ』戦略


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では小さいと何がいいのか。シンプルにお客さん一人ひとりを大切にできるという。10坪で20席ほどだと、店主の目が行き届く範囲におさまるのだ。アルバイトも1、2人程度。店主の奥さんが手伝うことでアルバイトを雇っていない店舗も。というのも、人を雇ってサービスを行うということは、思っているほど簡単ではないからだ。大吉では、坪数を増やし、スタッフを増やし、より大きな商売をする、ということは行わない。このサイズ感が勝ちパターンであり、お客さんとの触れ合いを優先する。商売の基本のキだ。

文=上沼 祐樹

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