民主化デモには、多くの若者の姿があった。自らを “Hongkonger(香港人)” と呼び、命をかけて政府と戦い続けた若者たちは、自由を制限された香港で何を感じているのか。また、外国へ移住する決断をした人もいる中で、学生たちはどのような将来を見据えているのだろうか。
香港在住の20代の女性、T.YさんとA.Sさん(イニシャル記載)にリアルな「香港のいま」を聞いた。
──今回の国家安全法の制定を聞いたとき、どう感じましたか?
T.Y:怒りを感じました。何年も前から中国は、香港をコントロールしようとしており、私たちはすでに多くの自由を失いました。今回の決定で、自由だけでなく人権まで奪われました。
A.S:私は怒りと苦しみ、絶望を感じました。人権を失ったことへの怒り、逃亡犯条例の時から続いてきたデモも実を結ばなかったという絶望です。政府は、態度をますます硬化させ、市民の声には耳を傾けていません。
──民主化デモに参加したことはありますか? また情報はどのように受け取ったのですか?
T.Y:昨年は、何回もデモに参加しました。逃亡犯条例改正が議論されていた際に、友達に誘われたのがきっかけです。市民の願いは、ただ普通の安全な香港に住みたいだけ。参加するうちにこの想いが強くなり、政府に気持ちを届けたいと思って参加していました。 私の友達は、警察に逮捕されました。もちろんその時も心配でしたが、最も恐ろしいのは逮捕ではなく召喚された後です。若者の間では、召喚後には警察や政府に何をされてもおかしくないという噂が出回っていました。そのような危険の中でも、デモという手段が私たち学生のできる、最も効果的で唯一の方法だったと考えています。
警察に取り押さえられる香港の若者 (Getty Images)