ラグジュアリー・コンサルタント、Urban Cabin Instituteパートナー

昨年の今頃、私は『グローバルエリートが目指すハイエンドトラベル』(講談社)を出版しました。その時はまさか一年後の世界がこうなっていようとは、想像もつきませんでした。新型コロナウイルスの再流行やウイルスの変異なども懸念される一方で、長い巣篭もり生活を経て「旅に出たい」「違う世界に身を置きたい」と感じている読者の方も少なくないのでないでしょうか?

新型コロナウイルスの出現による最も大きなライフスタイルの変化は、「オンラインが日常」になり、「リアルな体験が非日常」という逆転現象が起きたことでしょう。しかし、ネットの渉猟で旅の情報やビジュアルを愉しむことはできても、実際にそこを訪れた時の存在感や空気感、口にした食の味わい、人との触れ合いを五感で感じとることはできません。

だからこそリアルな体験、ましてやそこに身を置くことで自分が高まると感じるデスティネーションや、心を揺さぶられる唯一無二の体験は、これまでにも増して価値を持つ時代が到来したといえます。

その中で日本が迎えているチャンスの一つ、それがハイエンドトラベルへの参画だと、私はこれまで観光庁や神奈川県に提言してきました。なぜならそこには日本の産業振興に一役買い、日本の国力を高める可能性があるからです。

真っ先に旅を再開するのはハイエンドトラベラー


私がハイエンドトラベルを研究するようになったきっかけは、70年代中頃のベイルートに遡ります。

夕刻になると、ロングドレスやタキシードに身を包んだ様々な国籍の紳士淑女たちが、地中海に浮かぶレストランやバーに集って楽しそうに談笑していました。そこに流れる優雅で豊かな光景を、当時小学生だった私はリビエラホテルのプールの縁につかまりながら眺めていました。

グラスを片手に大人たちがどのような話をしているのかはわかりませんでしたが、子供ながらに何かエキサイティングな、革新的な会話が展開されているエネルギーを感じ取り、早く自分も大人になってあのような世界に身をおきたいと憧れをかき立てられたものです。思い返せば、当時度々目にしていた社交の景色が私にとってのハイエンドトラベルの原風景でした。

今は、旅は疎か、遠出さえ憚られる状況ですが、リアルな旅を真っ先に再開するのは、自身の移動手段を持つ「ハイエンドトラベラー」、続いてファーストクラスの商業フライトで移動するラグジュアリートラベラーです。グローバルマーケットで主に「ラグジュアリートラベラー」と呼ばれる富裕層旅行者のうち、上位1、2%にあたる超富裕層を私は「ハイエンドトラベラー」と定義しています。世界の旅行者のたった3%にあたるハイエンドトラベラーが、世界の旅行消費全体の4分の1以上を消費しています。

中でもプライベートジェットや、スーパーヨットと呼ばれる全長24mもの大型クルーザーを所有するハイエンドトラベラーは、新型コロナウイルスの渦中にあっても洋上を自由に旅しています。特に感染拡大の最中においては、陸にいるよりも安全な自身のスーパーヨットに「避難する」姿が見られています。スーパーヨットの中にはお抱えのシェフや世話係、時にはドクターなど、30〜40人のスタッフが乗船しているため、安心して旅ができるのです。

文=山田理絵

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