ビジネス

2020.06.29

5G連合「NTT x NEC」の資本提携は、脱ガラパゴスの鍵となるのか

NTTとNECの資本提携で何が変わるのか (GettyImages)

「オープン化で世界に出られる最後のチャンスかもしれない」。NECの新野隆社長は硬い表情でそう明言した。

NTTとNECは6月25日、次世代通信インフラ開発での提携を発表した。NTTが第三者割当増資を引き受ける形でNECに4.77%出資。これによりNTTはNECの第3位の株主となる。

オンライン記者会見には、NTT澤田純社長とNEC新野社長が登壇した。特定のビジネスについて焦点を当てる発言はなかったものの、これを原資に今年3月に商用化がスタートした5Gのみならず、10年後にやって来る6G、NTTが提唱する「IOWN(アイオン)構想」など最先端の通信インフラを共同開発していく。

「電電ファミリー」復活の印象 その背景は?


日本電信電話公社より民営化したNTTは、大量に調達する通信機器を、NECを始めとする富士通、東芝といった国内メーカーに依存し、「電電ファミリー」と揶揄された。現在でもこうした国内メーカーが取引先となる姿は珍しくなく、時として出向という形の人事交流もしばしば。だが、近年は価格、性能で国内メーカーの存在感が希薄になっていた。そんななかで今回は「電電ファミリー」復活の狼煙のような資本提携の印象を受けた。

この背景には中国のファーウェイ排除の動きによる追い風がある。5Gの基地局など通信インフラのシェアは、ファーウェイの30%を筆頭に、エリクソン、ノキアの3社が市場の4分3を占める。国内トップとされるNECでさえ、全世界のわずか0.7%のシェアしか持たない。

しかしトランプ政権が、ファーウェイなど中国製通信機器の使用が機密漏洩につながるという警戒感をあらわにし、排斥する色合いを鮮明に打ち出したことで、英国などヨーロッパ各国もアメリカに追従する姿勢を見せている。こうした潮流もあり、日本ではファーウェイ製の機器を5G基地局に採用する通信会社は今のところない。

「IOWN構想」を打ち出すNTTとしても、その実施に際し、海外勢頼みというのは心細い。IOWNとは「Innovative Optical & Wireless Network」の略。最近はなんでも横文字にすればよいという風潮があり、げんなりするが、要は「革新的な光学、無線ネットワーク」の構築だ。これには、5Gに代表される大容量・低遅延通信方式、多地点・超高速低遅延クラウドコンピューティング、ICTインフラエネルギー効率向上、データセントリック型ICTインフラを4つの柱としている。

なかでもデータセントリック型ICTインフラは、現在のインターネット・プロトコル・ネットワークをコグニティブ・ファンデーション・データ・ハブに置き換え、新たな通信アーキテクチャの具現を目指している。
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文=松永裕司

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