ビジネス

2020.06.29 07:00

5G連合「NTT x NEC」の資本提携は、脱ガラパゴスの鍵となるのか


こうした革新的な着想も、機器については海外頼みというのは、情報管理を念頭に置くと心もとない。NTTの構想ともなれば、官公庁のインフラにも影響を及ぼしかねないからだ。また、海外への納入実績がほとんどないNECとしてもNTTとのタッグにより巻き返しを狙う。

新野社長は「『まず国内から』となっていたことが反省点」とし、記者会見でも「日本発の革新的な技術、製品を創出し、グローバルに展開する」とその気概を明らかにした。

ただし開発費に2兆円を注ぎ込むとされるファーウェイに対し、600億円の出資でどこまで巻き返しが可能なのか。事業会社ではなくホールディングスであるNTTがどこまで技術供与が可能で、ドコモなどのグループ企業を巻き込んで行くのかも気になる点だ。これまで国内市場を見つめてきた両社の共闘が、グローバルな視点からどこまで有効なのかは、お手並み拝見とするしかない。

NTT 5G技術
NTTはドコモなどのグループ企業をどう巻き込んでいくのか、注目したい (Getty Images)

国内市場優先という哲学からの転換


人口1億2000万人という内需を抱えて来た国内メーカーは21世紀になった現在も、国内市場優先という哲学から抜け出せずにいる。

通信会社の中でも、グローバル展開を打ち出しているのは、後発のソフトバンク、楽天と色分けが鮮明だ。最新技術を有するベンチャー企業が雨後の筍のように生まれる、スカンジナビア諸国、バルト三国、イスラエルなどではスタートアップの段階から、そもそも「内需」など想定していない。数百万の自国民をターゲットとしていたのではリクープ(損失を取り戻すこと)も難しい、設立時から相手は世界だ。国内だけで成長を遂げてきた企業が、発想や哲学の転換もなく、お互いの傷を舐め合うような資本提携で終わるようでは、未来はない。

国内トップとはいえ、NTTドコモのような会社では、数百万円から1000万程度のプロジェクト決済に数カ月かかるのは当たり前、億単位となると1年を要することもザラだ。生き馬の目を抜くようなグローバル社会において、ぬるま湯につかったスピード感で太刀打ちできるかは多いに疑問だ。

平日の朝、「NEC村」とも呼ばれる東京・田町を歩いていると、白シャツと黒ズボンに鞄……画一化されたような出で立ちの人々が大きなビルに入っていくのは異様な光景にも感じてしまう。実績や能力による登用よりも、年齢や肩書きを優先する社会にこだわりながら、勝算を立てるのはなかなか難易度が高いだろう。

国内企業同士の資本提携は歓迎するが、発想の転換なくして革新がもたらされるものだろうか。

20世紀サイバーパンク文学の金字塔的SF小説『ニューロマンサー』(ウイリアム・ギブスン作)は、サイバネティクスと超巨大電脳ネットワークが地球を覆い、「マトリックス」と呼ばれるサイバースペースを予見した。現在のネットワーク社会到来を提示してみせたとも言われる。物語の最初の舞台はチバ・シティ、日本を彷彿とさせる架空都市だった。

残念ながら21世紀、ギブスンが提示したようなネットワーク社会の最先端は日本にない。NTTとNECの提携は、サイバースペースの中心を日本に取り戻すのか、非常に興味深い。


連載:5G×メディア×スポーツの未来
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文=松永裕司

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