間違った期待値設定
デザインが課題の解決や目的達成のための手段だとするならば、まず最初のゴールや期待値の設定がとても重要になってくる。しかし、多くの場合その時点で既にズレが生じている。多くの場合は、当初設定していた期待値よりも、より多くのことを求めすぎる傾向がある。
例えば、ECサイトのチェックアウト機能の改善という目標に対して、リピート顧客がよりスムーズに買い物ができるようにするために、ステップを減らすというゴール設定をしたとする。しかし、それがいつの間にか「ユーザーの買い物体験の向上」といった、壮大なるテーマにすり替わり、デザインフォーカスがぶれ始める。
その結果、本当に何を達成すべきかを見失い始め、当初設定していたゴール達成が難しくなってくる。これは、多くの場合、プロジェクトリーダーが上司の顔を気にしすぎることで、欲張りになってしまっているのが原因だ。
典型的な結果例: 何をするにも使いにくいデザイン、構成要素が多すぎて分かりにくい
クライアントや担当者に対して間違った質問をしている
デザイナーが最もしてはいけない質問は「こんな感じでどうでしょうか?」だろう。この質問をした瞬間に、そのデザインに対する主導権は相手に渡ってしまい、デザイナーの仕事は一気に言われたことだけをやる、オペレーターになってしまう。
そして、最悪なことに、その時点からデザインのことがよくわからない素人が、個人的な感覚で指示を出し始める。そこにデザイナーとしてのアイディアを提案する余地は残されていない。そうなってくると、その後はデザインのクオリティーがどんどん劣化してしまうだけだ。
以前に先輩のデザイナーから受けた最も重要なアドバイスの1つが「デザインプレゼンの際にはデザインの話をするな」だった。この狙いは、そのデザインが解決するべき課題や、目的、経営的ゴール、プロダクトのビジョンなどにフォーカスを当てることで、デザインを"目的"ではなく、あくまで”手段”として客観的に捉えるようにすることだ。
その目的も考慮せずに、ボタンの色は青が良いか、赤が良いかのような議論が始まったとしたら要注意である。
典型的な結果例: デザイン理論的にもトンチンカンなアウトプット
民主主義の決定プロセス
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優れたデザインを世の中に出すことよりも、プロジェクトメンバーや上司の顔色を伺うことを優先したプロダクトは必ず失敗する。例えば、Appleの製品のその多くが、機能面でかなり"削られた"ものであるケースが多い。それは、iPhoneの物理的ボタンの数や、Macbookのポートの数を見てもわかる。これがもし、プロジェクト参加メンバーみんなの合意を得るプロセスであったとしたら、あのようなプロダクトは生まれない。
また、SONYのウォークマンのような、新しい価値を生み出すプロダクトは、熱狂的なリーダーの一存で決まっていくことも多い。この辺は議論やぶつかりを避ける傾向にある日本企業にとっては大きなハンデとなっている。
典型的な結果例: つまらないデザイン、機能てんこ盛りのプロダクト