もちろん、今回、経済的や心理的打撃を受けた企業や個人が多々あることも承知している。暮らしに困る人々や、教育を受けられない子どもや学生のことをないがしろにして良いということではまったくない。
これらは何よりも解決していかねばならない課題なのだが、この数カ月の経済活動の停滞によって傷を負った部分については、その傷が今回の騒動がきっかけで生まれたものか、もしくは、もともとあった古傷のためのものなのかということを見極めることで、「新たな日常」を生き抜いていくための次の課題やチャレンジすべきことごとが見えてくる。
そういったより良い未来に向けた課題解決のための先行投資事業は、財力や人力のある民間企業が頑張るのも大切だが、実はこれこそが本来の「行政」の役目であり、「税金、公金」の正しい使い途でもあるはずだ。こういうことを書くと夢想家の理想論のように思われるかもしれないが、ここで夢や理想を語らずしてどこで語るのかと思う。
ああ、またこれか
現在、いろいろと問題になっている政府の「Go Toキャンペーン」などは、4月当初、急遽、事業設計をせざるを得なかった国の官僚たちの切羽詰まった状況を差し引いて鑑みても、最初にその内容を見たときには、旅行の大幅割引支援や大規模な広告キャンペーン実施などが主に記されており、ああ、またこれかという気持ちは禁じ得なかった。
大手航空会社への全面支援などは致し方ないと思う部分もあったが、多分、このスキームだと国内の大手企業ばかりが事業全体を受注し、各地方の実情に合わせた支援形態にはなりづらいものになるだろうし、大手広告代理店などが国内外で行う、いわば対処療法的なキャンペーン事業に相当の大枚が費やされることも容易に想像できる。
そんななか、投入される額は小さいけれども、地域の観光資源の磨き上げを行うという事業案も書かれてはいたが、むしろ、そういった地道でも各地域それぞれの実情に合わせたハード整備とソフト事業の両輪による、持続可能な地域の観光資源の磨き上げや、思い切った「あらたな観光資源化」などに取り組む支援事業こそが主軸であってほしかった。
もしくは、もっと各地の地方自治体に実行権限と予算を委譲し、地域地域で本当に必要としている大きな課題解決策を迅速に遂行できないものだろうか。経済産業省も、国土交通省も、観光庁も、農林水産省も、各地方の抱えているリアルで緊急の課題へのきめ細やかな対応を行うのは、たとえ頭脳明晰な方々による専門家会議で延々議論しても、簡単ではないと私は思うのだ。