コロナで課題が浮き彫りに── 「実験思考」は組織をどう変えるのか


吉田:そのあたりは、オランダ人は過密にならないようにバランスをとるのがうまいですよ。

中竹:リモートワークに対する組織としての評価も二極化しています。「やってみると、案外できるじゃないか」とさらに前に進めようとする組織と、「全然うまくいかない」と不満を溜めている組織と。実はこれ、もともと潜在的にあった組織のさまざまな課題が、コロナという危機によって表出されただけなのだと、早めに気づいたほうがいいですね。
 
──吉田さんがリモートワークを円滑に進めるうえで意識していることはありますか?

吉田:僕が気をつけてきたのは「シンプルにはっきり伝える」こと。これに尽きます。まあ、僕の英語力では日本語と同等に細かいニュアンスを表現できないという事情があるのですが、「AじゃなくてBがいい」とはっきりと伝えざるを得ないことで、結果として誤解なくコミュニケーションできています。

でも考えてみれば、背景や文脈が伝わりにくい状況では、シンプルかつ明確に意思表示することは必要なんですよね。レストランで「おまかせで」の一言で注文が成り立つようなハイコンテキストな文化は日本だけ。海外では、肉の焼き方ひとつとっても事細かに指定しなくちゃいけない。国籍が入り混じるチームで仕事をしていたらなおさらのこと。「シンプルにはっきり伝える」はリモートでのコミュニケーションでは欠かせない気がします。

中竹:ダイバーシティのなかで働くとは、まさにそういうことですよね。離れていたとしても、同じ方向へ向かっていけるどうか。そのためには、シンプルに、かつ正直に本音を伝えることが重要になる。そして、正直になるには信頼関係が求められるし、まずはリーダーが率先して素の自分をさらけ出していく姿勢が大事になっていくのだと思います。

吉田:僕もチームを率いるリーダーの立場なのですが、よくメンバーから「もっとハッキリ言えよ」と促されます(笑)。

中竹:いいですね。そういう言葉がメンバーから出てくるのは、信頼関係ができている証拠です。さらに言えば、お互いの違いを前提としたコミュニケーションは、グローバルチームに限ったことではなく、実は日本国内でもより重要になってくるだろうと私は見ています。

例えば、関西と東北では意見を発する時の押し引きの仕方が異なるなど、日本国内でもコミュニケーションスタイルの地域差はありますよね。リモートワーク推進によって遠方の同僚や取引先とやりとりする機会が増えたという人は、少し意識したほうがいいでしょう。これから副業が促進されるとも予測されていますし、日本のビジネスシーンにおける“国内異文化交流”は増えていくはず。一気にダイバーシティに対応できるチャンスと捉えたほうがいい。

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文=宮本恵理子

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