コロナで課題が浮き彫りに── 「実験思考」は組織をどう変えるのか


吉田:「変われるかもしれない」と自分たちに期待することって大事ですよね。イギリスでも、ブレグジットの時にそんな気運が高まりました。日本がオランダと比べて進んでいるところって、正直あまり浮かばないのですが、それでも社会全体の意識が変わろうとしている兆しは感じます。

例えば、オランダをはじめヨーロッパで盛んに言われている「サーキュラーエコノミー(持続可能な循環型経済)」に関心を寄せる人は増えました。このキーワードを日本向けに発信し始めた2年前はほぼ反応がありませんでしたが、今はふた月と開けずセミナーを開催するほどに。

SDGsが日本でもトレンドになっているという理由もあるでしょう。僕はよく冗談で「日本ではタピオカの次にSDGsが流行っているらしい」と言うのですが、一過性のトレンドで終わらせず、社会変革につながる“シフト”にしなければ意味がないですよね。コロナによってもたらされた新しい働き方についても然りではないでしょうか。

中竹:持続可能な産業というのは、本来であれば、木造建築や竹の加工技術といった日本が得意としてきた伝統芸が生かされるはずなのですが、もったいないですね。

自分で思考し、行動する


吉田:オランダが国を挙げて先進的な取り組みができるのは、地続きの列強に囲まれ、「周りに利用されることで発展してきた」という歴史の積み重ねがあるからだと思います。未来に向かって新しいものをどんどん取り入れる、“実験思考”が染み付いている国だと感じますね。

中竹:その“実験思考”こそ、これからの組織やビジネスモデルでも重要なファクターではないかと私は思います。つまり、何度も試しながら、改善していく。そこにあるのは大きなゴール設定だけで、事細かな指示命令やマニュアルは存在しない。

吉田:おっしゃるとおりですね。しかしながら、日本ではまだまだ「マニュアル頼み」や「指示待ち」の感覚が根強いなぁと感じます。ワークショップを頼まれてしゃべっていても、求められるのはとにかく事例の羅列。「こうしたらうまくいきます」という模範回答なんですよね。確かに短期的な即効性はあるかもしれませんが、それは自分で考えることを放棄しているのと同じ。そこに本質的な問いや創発的な気づきは生まれないから、退屈に感じてしまいます。

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中竹:確かに、ハウツー情報に偏りがちですよね。「自分で考える」を放棄することは、かえってコミュニケーションコストを増やすだけなのですが。

吉田:永遠に指示やマニュアルを求め続けるから、という意味ですよね。今回の日本の緊急事態宣言解除後の「新しい生活様式」の発表も心底驚きました。「レストランでは横並びで」なんて指示、オランダでは誰も従いませんよ。自分の行動は自分で決める。そんなこと当たり前です。

中竹:実際のところ、目的を掲げるだけでは行動できない人が多いことも事実です。私はひたすら自分で考え、気づき、行動するリーダーを育てたいという思いでずっとやってきましたが、そこに至るまでに時間がかかることも多いです。
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文=宮本恵理子

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