5月下旬に開かれた中国の全国人民代表大会(全人代)は、日本でいう国会のようなもの。各地域の代表が集まり、予算の審査や法律の改正について議論される。5月28日には、香港での反体制活動を禁じる「香港国家安全法」が採択され、閉幕した。法案の詳細な内容はこれから議論される予定だが、2009年に同様の法案が成立したマカオのように反政府行為や分離独立行為などが犯罪として罰せられるようになるとの見方もある。政府に対して自由に意見ができなくなると危機感を抱いた多くの香港市民がデモに参加しているのだ。
こうした香港に対する中国の圧力が増す中で、世界中の国々から「待った」の声が叫ばれている。
昨年は法律を制定したが、今回の措置は?
米中の緊張関係はしばらく続きそうだ(Getty Images)
貿易戦争などで緊張状態にある米中関係。アメリカ政府は昨年、香港市民を中国政府の取り締まり対象とする逃亡犯条例案に対応して「香港人権・民主主義法」を制定し、中国政府に対抗する姿勢を見せた。この法案は、アメリカ政府に中国の一国二制度が保たれているか毎年、検証を義務付けるもので、抗議活動で逮捕された香港市民に対してアメリカのビザ発行を認めるよう促す内容も含まれている。2019年6月に提出され、11月には上院下院を賛成多数で可決されており、迅速な対応だったとされる。
さらに、今回の対応はより厳しく中国を突き放すものとなった。
トランプ大統領は、香港国家安全法が採択されたことを受け、5月30日(日本時間)に香港に対する優遇措置を停止すると発表。中国政府への反発する抗議運動を規制する法案が導入されることで「香港にもはや自治はない。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と発言した。一国二制度が機能していることを前提にした貿易や渡航における優遇措置は認める必要がないと判断したとみられる。
また、優遇措置の停止に加えて、アメリカ人以外の中国からの入国者を制限することも合わせて発表した。アメリカが安全保障上のリスクがあると判断した場合のみとしているが、多くの学生に影響が出そうだ。