テクノロジー

2020.06.01 06:30

バイオテック分野にスマホ到来に似た衝撃、Time BioVenturesが考える「ポストコロナの世界」


未来は「パーソナライズ」


最後に、過去20年に起きたDNAシークエンシング技術の飛躍的な発展から登場する、新時代のキーワードを聞いた。浮かび上がってきたのは「パーソナライズ」だ。

「私たち個人は互いに多くの違いがあります。遺伝子をみれば、年をとるにつれて身体がどのように変化していくのか、健康や病気の中でどのように変化していくのか、様々な理由でわかるようになってきました。

医療の世界で起きていることに、『ワンサイズ・フィット・オール』のアプローチから、一人一人の患者さんの病気の状態を正確に理解し、どんな問題が起きているのかを理解するモデルへと移行しつつあることが挙げられます。

たとえば癌であれば、遺伝的特徴を理解する必要があります。自己免疫疾患であれば、炎症に関与している免疫細胞の種類を正確に理解し、根本原因に対処することが必要になるでしょう。こうした技術は、かつては不可能なことでしたが、今では現実のものとなりつつあります」(D.A. Wallach)

将来的には、個人の遺伝の特徴や、生活習慣を考慮に入れた「パーソナライズ医療」が、より多く行われるようになる。20年前のように、特定臓器の癌は、限られた方法でしか治療できなかったという時代とは大きく異なってくる。個人に最適な治療法が提案されるようになり、日常的な予防医療が提供されるようになる。

そのためには、治療法や検査のためのデリバリーシステムが、パーソナライズ化された未来に向けて最適化される必要が出てくる。Time BioVenturesはこうした未来を見据え、投資を実施していく。

バイオテックおよびヘルスケア分野でのブレークスルーは、主にアカデミアで起きているという。Time BioVenturesが支援しようとしているのは、それらの発見を単なるアイデアから製品に変えていく起業家たちだ。優れた起業家のタネを見つけ、資金や戦略的指導、人脈を提供し、医療を変える手助けをすること。

新型コロナウイルスで、否が応でも誰もが医療に目を向けるようになった。この分野において、急成長を遂げる起業家を見抜く力を持つD.A. Wallach氏と、製薬企業で培った膨大な知識と経験を持つTimothy Wright氏がタッグを組み、どのようなポートフォリオを組み立てるのか、注目される。

文=福家 隆

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