バイオテック分野にスマホ到来に似た衝撃、Time BioVenturesが考える「ポストコロナの世界」

Time BioVenturesジェネラルパートナーのD.A.Wallach氏とTimothy Wright氏(Photo by Stefan Simchowitz)


今はターニングポイントとも呼べる時期


Time BioVenturesは、医療の在り方を変える生物科学分野におけるブレークスルー企業に投資する。なかでも「疾患診断に役立つ新技術」「新薬治療ソリューション」「診療・通院体験の最発明」の3つに興味を持っているという。

同ファンドが注目する領域は、劇的な変化を迎えている。Wright氏は次のように答える。

「私自身、バイオテクノロジー、製薬、医療の現場で、様々な企業に参加してきました。過去の経験から見ても、今は小さなアイデアを新薬として形にできる技術が急速に発展しています。理由の1つとして、ヒトゲノムや疾患データを含む大規模データセットを活用できるようになった点が挙げられます。これまで考えてきた未来とは全く違う道筋を描けるようになりました。ヘルスケア・ライフサイエンスやバイオテクノロジー全般において、今はターニングポイントとも呼べる時期なのです」


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AIやビックデータの活用ユースケースが広く普及し、巨大なデータを比較的自由に扱えるようになった現代、従来では考えられなかったスピードで新薬開発などがおこなえるようになった。

そこに新型コロナウイルスがやってきた。2020年はTime BioVenturesにとってどのような意味をもたらしているのだろうか。Wallach氏は答える。

「新型コロナウイルスの流行は、医学の歴史の中でも特異な転換点となるでしょう。明らかに経済を変えていますし、多くの企業の衰退を生み出しています。他方、新たな需要も創り出しました。たとえば感染診断テストやワクチンの必要性が今、非常に高まっています。

今回の流行は悲劇である一方、バイオテクノロジー産業を加速させているのは事実でしょう。ただ、感染に対応するためのソリューションは、将来的に他の感染症や呼吸器系の病気にも応用されるはずです。イノベーションが加速され、上場や買収案件も増えると考えます。現状をネガティブに考えては前に進みません。新たなチャンスとして認識しています」
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文=福家 隆

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