バイオテック分野にスマホ到来に似た衝撃、Time BioVenturesが考える「ポストコロナの世界」

Time BioVenturesジェネラルパートナーのD.A.Wallach氏とTimothy Wright氏(Photo by Stefan Simchowitz)


過去20年の革命的な変化


Time BioVenturesが注目しているのが、過去200年と20年で発生した生物学上の革命の歴史だ。生物学の基礎は20世紀に生み出されてきた。そしてこの20年の間に非連続的な発展を遂げてきた。

「技術そしてツールが安価になったことが、生物学の発展を促しています。なかでもこの20年の動きで注目すべきがDNAシークエンシングです。生物がどのように機能しているかを以前よりもはるかに速いスピードで学べるようになりました。結果、非常に短い期間で自然界の生命に関する膨大な量の情報が得られるようになりました。このような情報の蓄積が、医療変革を後押ししています」(Wallach)

遺伝子解析スピードの向上が著しい。毎年1エクサバイト(百京バイト)相当の遺伝子およびそのほか生物学データが生み出されているという。20世紀には想像もつかなかったデータ解析スピードで、あらゆるものがディコードされる。

データ化の流れはバイオエンジニアリングに繋がり、意図しなかった新たな発見や発明に繋がる。Wright氏は現在私たちが置かれ得ている状況をスマートフォンの登場に例えてくれた。


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「過去数十年の間に私たちの生活に起きたことと、生物科学の変化は非常によく似ています。今、私たちは約15年前に始まった変化と同じ革命をみています。

スマートフォンを使ったコミュニケーションは、それ以前に生きていた人からすればSFのような話。信じられないものでした。しかし、突如として発表され、今や私たちの生活は一変しました。D.A.と私は、今後10〜20年の間に、バイオテクノロジー、ヘルスケア、医療分野で同じようなことが起きる未来が興ると感じています。

先ほど話したDNAシークエンシングに関して、かつては1つのゲノム解析に数億、数十億ドルかかっていましたが、今では1000ドル以下になっています。コモディティ化が進めば、身体や病気に関する情報は、まるでスーパーコンピュータを扱っていた時代のものからスマートフォンの時代に移行したように民主化されるでしょう」(Timothy Wright)
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文=福家 隆

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