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2020.06.17 08:00

ビットコイン、起業、アートの共通点は「売り切れがない」こと。|トップリーダー X 芥川賞作家対談 第5回(後編)


テクノロジーは、「制限を外していく」


施井:上田さん、僕から質問してもいいですか? 起業は、ソフトウエアビジネスが出てきてから、1円起業なんかもできるようになって、それ自体は簡単なものになっている。そうした中で、テクノロジーに対する希望ってどういったものがありますか? 書かれている小説にもたくさん出てくるんですが、小説には書けない「感覚的なこと」もあるんじゃないかと思って。

上田:基本的にテクノロジーは、「制限を外す」方向にのびて行くじゃないですか。この間、医療関係の方とお話ししていて、「医療の目的は体の制限を外すことかもしれない」と思ったんです。人間、というか生物には寿命というリミッターが設定されていて、医療の究極的なミッションを、そのリミットを外していくことと考えると、医療もITテクノロジーと同種に見えてきます。医療に限らず、すべてのテクノロジーや人間の活動は、「制限を外す」方向にあるように思えます。

僕も、制限は怖い。心理的傾向を精神病質に当てはめるとすれば、明らかに僕は閉所恐怖症ですね。

施井:閉所には、自分の生き場所を制限されますからね。

上田:ええ。あとは、「自分から」出られないこと、最初から与えられた条件をリセットできないことは非常に不快です。小説を書いているのも、「そういうの不快じゃないか?」と問い続けることで誰かが何かもっと制限を外す方向で色々開発してくれるんじゃないか、と期待している面がありますね。

施井:なるほど。文学も、そういう意味では周囲の喚起力に任せる、読み手に制約を課さない、いろんな人に任せようとする表現形態なのかもしれませんね。

対談後記

正しいかどうか、有益かどうかを越えて「新しさ」を模索した軌跡としてのアートを、より広く、より適切に流通させようとIT成果であるブロックチェーン技術が使われ始めています。「アート」と「ブロックチェーン」と聞くと、なんだか実体のないものの掛け合せに思われるかもしれませんが、スタートバーンの取り組みは、モノに付随した、物質として以上の価値を実体化させる試みでもあります。ヒトはパンのみにて生きるに非ず。アートとITの化学反応に、期待が膨らみます。

文・構成=石井節子 写真=帆足宗洋 サムネイルデザイン=高田尚弥

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