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2020.03.18

1000万IDスタートアップが二極統合時代に「突き抜ける」方法|トップリーダーX芥川賞作家対談 第3回

「2つ以上の専門分野を持つことの強み」が言われ始めている近年、実業 x クリエイティブで成果を結ぶ新しい才能として各界から注目を集めている人物がいる。上田岳弘。小説『ニムロッド』で第160回芥川賞を受賞した彼は、その登場によって「日本文学はB.U.(Before Ueda 上田以前)とA.U.(After Ueda 上田以後)に分かたれた」ともいわれる新星だ。

上田氏はまた、文学者としての「クリエイティブな発想」を武器に、最先端のIT企業の経営にも取り組む実業家であることでも知られている。本企画は、上田が、「クリエイティブな発想法」を基にして、社会にイノベーションを起こす各界のリーダーと対談するものである。

第3回は「Nextメルカリ」として注目されるスタートアップであり、スマホ向けゲーム配信プラットフォーム「Mirrativ」の運営会社「ミラティブ 」CEO、赤川隼一だ。

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上田岳弘:ミラティブの立ち上げは、赤川さんが所属していたDeNAの新規事業が元になっているんですよね。そして、赤川さんはDeNAでは最年少の執行役員だったとか。

赤川隼一:はい、はい、新卒で就職し、入社半年でマネージャー、その後「Yahoo!モバゲー」の立ち上げを担当し、海外事業の責任者などを務めた後、28歳で執行役員になりました。DeNAには「抜擢カルチャー」があり、結果を出すエースを引っこ抜く「芋掘り」みたいなことは日常茶飯事でしたね。

上田:「モバゲー」では何をやったんですか? ゲームづくり?

赤川:はい、ゲームづくりもやりましたが、他にも例えばヤフー株式会社と一緒にPC版モバゲーをゼロから立ち上げたり、モバゲーを海外展開をやったり。その後はゲームを実際につくって運営する部署のマネジメントをやったり、管理の仕事もひと通りしていました。

上田:そもそも「スマホでのゲーム実況」という領域に目をつけられた経緯は?

赤川:2014〜15年、ゲーム実況を見ている人が世界で毎月1億人いるとか、アマゾンがその会社を約1千億円で買ったとかいうニュースを見ており、ゲーム人口自体がスマホ中心に増えていくことを考えると、これからは絶対にゲーム実況はモバイルになると確信しました。次の新しいエンターテインメントインフラになると感じたんです。そんな時にスマホだけでゲーム実況できる技術を見つけて、「ミラティブ」を立ち上げました。

上田:僕自身もやっていることですが、ビジネスと芸術、2つの領域にまたがって活動することの「掛け算」や「化学反応」についてはとても興味があります。赤川さんも、学生時代は音楽にかなり傾倒されていたと聞きましたが。

赤川:はい。中学時代にボストンに3カ月いて、そこでビートルズに出会って、音楽オタクになりました。高校時代は、昼食を抜いて中古CD屋に通っていましたね。

上田:そして、音楽を通じてインターネットの魅力に出会ったとか。ちょうど世紀の変わり目に「ナップスター」でのファイル交換が多くの人の心をつかんだように、もともと音楽とインターネットの親和性は高い。

赤川:はい、僕らの高校時代は、1曲聴くために夜通しかけて5メガのデータをダウンロードしていましたが、インターネットの存在が音楽と個人の関わり方を変えましたよね。「テレホーダイの時間帯にWebサイトにアクセスすると、知らないおじさんが知らない音楽を教えてくれる。クラスにはそんな音楽を知っている友人はいないのに。



インターネット上で趣味を通じて人と人が出会い、「わかりあう」ことで、人生の可能性が爆発的に広がる。それが原体験として強烈にインストールされた高校時代でした。
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文・構成=石井節子 写真=曽川拓哉 サムネイルデザイン=高田尚弥

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