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2020.06.17

ビットコイン、起業、アートの共通点は「売り切れがない」こと。|トップリーダー X 芥川賞作家対談 第5回(後編)


アーティストに「天然」はいない


施井:逆に言うと、いい絵を描ける人は何万人もいますが、その中で残るのは、「時代の中で何を象徴したか」とか、「その人がいることによってどう美術史が変わったか」が大きい。

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Photo by Martino Pietropoli

上田:バスキアの話に戻りますが、彼はそれを全部理解した上でやっていたのか、あるいは天然だったんでしょうか。

施井:「アーティストに天然はいない」、と僕は思っています。彼を直接知っていたある人が言うには、バスキアは記憶力も非常に良かったそうです。

上田:確かに、純文学の作家で、とくに最近出てきた人には「天然はいない」と思います。デビュー当初からよく知っている作家が芥川賞を取ることも多いんですが、滝口悠生さんも、高橋弘希さんも天然ではない。それぞれに固有のバックボーンをお持ちだな、と感じます。

施井:そうでしょうね。

上田:やっぱり、みんなちゃんとわかってやっていますね。

施井:もちろん天才性がないと同じアイデアでも突き抜けるものは作れない、けれどそこに「意図」もないとだめですよね。

施井:アートの分野にも天才型とそれ以外がいて、たとえばマチスが天才と呼ばれ、ピカソが意図とかコンセプトの人といわれています。マチスやバスキアはいわゆるギリギリの天才、天然が少し入った作家としても、やっぱり彼らには「意図」があります。明らかに美術史の「文脈」に沿っていたり、超一流の人たちの「理屈」をきれいに踏襲していたりするのは、偶然とは思えないですね。
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文・構成=石井節子 写真=帆足宗洋 サムネイルデザイン=高田尚弥

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