「来歴を残す」ことの重要さ
施井:もう一つ、僕は来歴を残すということを重要視しています。今の時代ってそれこそAIとかロボットを使ったクローニング技術が非常に上がっていて、たとえばレンブラントが今生きていたら描いていたかもしれない絵も、AIで描けるんですよね。スペクトルを同一にするレベルで素材も再現できるから、ロボットアームなんかで複製すれば、もうオリジナル作品としか見えない。じゃあその真正性はだれが担保できるんだ、というレベルにまで到達しています。だからこそ、「来歴」がより注目度を高めていくと思うんです。
Forbes_3_26_20203130
上田:レギュレーションがしっかりすると、素人でも投資しやすいですよね。レートも固定されるし、価値が上がるかどうかも、「通貨が上がるか」と同じだと理解できる。「あの鑑定士がこう言っている」ではないので、投資しやすいなと思います。
僕の小説『ニムロッド』の中で、「ビットコインの価値」の話が出てくるんですけれど、結局、「みんなが欲しいから欲しいだけ」で、「欲望」と「価値」はほとんどイコールなのではないかと思うんですよね。
仮想通貨市場、株式市場、アート市場の共通点は「売り切れがない」こと
施井:仮想通貨市場、株式市場、アート市場、この3つの共通点は何かというと、「売り切れがない」ことなんですよね。一度売れてもその後二次流通の道がある。つまり売れたということは一時的に誰かが所有しているだけとも言えます。売り切れないし、定価もないし、価値が上がり下がりする根拠も、究極的には買いたい人と売りたい人の中にしかない。デイトレードもあれば長期トレードもある。「価値」そのものの扱いが三者では似ているんですよ。
ビットコイン以外の仮想通貨(アルトコイン、代替通貨)の中でも、時価総額が小さく、投機性が高い仮想通貨で、年に1取引しかないような仮想通貨を「草コイン」といいますが、「売れないアート」はそれと似てるんです。
上田:どちらも「俺はいいと思う」という取引の仕方。
フィンセント・ファン・ゴッホの作品
施井:はい、「全く動かない株」のような。逆にピカソやゴッホは例えるなら「毎日大量の売り買いがある株」。アートの世界の実態も、トッププレイヤーのいくつかだけが激しく動いていて、他は月に数取引あるかどうか、ですよね。