松浦:ブロックチェーン自体の泣き所というよりもその外側、すなわちサイバー空間と実空間をつなぐ部分の安全性、「トラスト」の問題はあります。
坂本:もともとのデータ自体が、本当に本物か、不正じゃないかはブロックチェーンでは審査できない。たとえばビットコインが流出したっていう事件でいえば、ブロックチェーンによって信頼が保証されたビットコインをいざ現金に換えるところで、色んな事件が起こっている、ということですか。
松浦:それもありますね。
実は、巷で大きくメディアが報じているような事件に関していうと、あまりブロックチェーンとは関係がない。そしてそれは実は、今僕が話題にした、「実際の世界で起きていること自体の正・不正はブロックチェーンに判断できない」という問題ですらないんです。
皆さんもインターネットを使う時に、IDやパスワードは大切にしますよね? まったく同じことで、ビットコインや仮想通貨を入れておく「財布」のパスワード、あるいはそれに相当する道具は厳重管理しなければならないのに、単に「その管理が甘かった」というだけの話なのです。そうなると別に、技術的にはブロックチェーンやビットコインに限った問題ではない。
ただ、セキュリティ経済学の観点から見ると多少の関連はあって、セキュリティっていうのは技術だけではなく、人の行動で変わってくるものなんです。どんな完璧な技術でも、人が使い方を間違えれば正確性が下がってしまう。
ブロックチェーンはまだ学問的な研究がそこまで十分に進んでないのに、「これは儲かるぞ」と飛びついて、ビジネスをやろうとしている人たち、そういう人たちに「セキュリティ意識が甘い」傾向があるんです。
今のように「ビットコイン流出問題」ばかりが拡散されていくと、「ブロックチェーン=ビットコイン」という勘違いがされがちになり、かつ、ブロックチェーンの負の側面が強調されがちになって心配です。
上島:では、「安全性」がブロックチェーンだけの問題ではないとしたら、逆に特有の課題のようなものはありますか?
松浦:ブロックチェーンの技術はたくさんの情報セキュリティ技術を使う「応用問題」のようなものなので、固有の課題を見つけるのは実は非常に難しいですね。逆にブロックチェーンをより安全なものにして、実用化のレベルを上げる努力をすると、それはおそらく他の様々な分野に波及効果が大きいでしょうね。
(後編:中学生が東大教授に直撃「ブロックチェーンは世界共通インフラになるか」に続く)