外出自粛生活3カ月超 ベトナムの「容器包装ゴミ」からみえた危うい価値観

食材の容器包装ゴミで作ったおもちゃ




ショッピングセンターへの入場は検温とマスク着用が義務付けられている。

危うい価値観に取り囲まれた世界で唯一支えになったのは、今、この瞬間を最大限に楽しむことや、ただ自分のまわりにいる人を大切にするということでした。家で静かに過ごすことを強いられ、最初はストレスを感じましが、徐々にこういう生活も悪くないなと思うようになりました。同じような感覚を持たれた方も多いのではないでしょうか。

昨今ではマインドフルネスが流行し「今、この瞬間を大切に生きる」という考えが世界中で浸透しはじめていました。私も瞑想やヨガを通してその感覚を磨いていましたが、今回のコロナ騒動でその大切さを否応なしに体に染み込ませることになったのです。

また同時に、私たちが絶対に避けられないにも関わらず普段は蓋をしている“死”に対しての意識も、リアリティを持って受け入れざるを得ない状況になりました。世界中がウイルスに侵食され、誰しもが感染して死ぬ可能性があるということをリアルに体感しました(実際の致死率は低いですが)。

人が死を意識した時、何に価値を感じるかというと、それもやはり一瞬一瞬を大切にして、身近な人と大切な時間を過ごすことでしょう。

さらに、ロックダウン中に唯一開いてた施設が近所のお寺でした。ゆっくり散歩をしながらお堂で、騒動の収束や大切な人々や事柄について願うと、妙に心や呼吸が落ち着いたものです。心の拠り所が明確になる祈りもまた人類が長らく大切にしてきたことでしょう。


祈るだけではなく、ゆっくりと時を過ごす場としての機能を備えるお寺。

これらは人間が古来より持ち合わせてきた心持ちであり、ここに来てその普遍的な価値観に意識を向けようということが、今回のCovid-19の騒動で浮き彫りになったように思います。

そのような考えに立脚すれば、「アフターコロナ」、「withコロナ」時代の生き方を分析して予測することなどはあまり意味がなく、もっと原理原則に基づいた価値を頼りに生きようという考えに行き着きます。またこのことは、コロナ如何に関わらず、もともと私たちが到達しなくてはいけない境地だとも言えるでしょう。

とはいえ私たちは既存の社会や経済システムの中で、危うい価値観とともに生きていく必要があります。今、この瞬間を生きる、身近な人を想う、祈るということを大切にする価値観に比重を置きながらも、様々な危うい価値観と折り合いをつけながら進んでいくしかありません。

また原理原則に基づくといっても決してノスタルジーに浸るのではなく、テクノロジーなど現代の恩恵も受けながら、2020年代ならではの心の有り様を模索していく必要があるでしょう。

このように人生において最もかけがえのない価値とは何?! という問いに気づきを与えてくれるのがこの容器包装ゴミのおもちゃということで、私にとってかけがえの物として紹介させていただきます。

連載 : クリエイティブなライフスタイルの「種」
過去記事はこちら>>

文・写真=国府田淳

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事