しかしながら、そのスピーディーで強硬な政策が功を奏し、感染者は5月7日時点で288人(死者はなんとゼロ)と最小限に抑えられました。イギリスの調査会社「YouGov」によれば、ベトナム国民の93%が政府の対応に満足していると答えたほど、世界で最も新型コロナ対策の満足度が高い国とされています。
とはいえ、タクシーやグラブ(配車サービス)、バスがストップして移動手段が断たれ、アパートメントの遊具やプールも使えなくなり、お店もすべて閉まり、何もできない状況に追い込まれた私たちはたまったもんじゃありません。
ロックダウン解除後も客足が戻らず、半数以上のお店が閉店しているベンタイン市場。
幼稚園が休園していたのは、1月末から。ロックダウンが言い渡された時点で子ども達は既に2ヶ月間を自宅ですごしていました。そろそろやることも尽きてきたという頃合いに、ロックダウンでさらなる追い打ち。長期戦に備えておもちゃを買おうにも、翌日にはすべてのお店が閉まってしまいその時間もなく……。唯一開いていたのはスーパーマーケットでした。たまの外出は食料品の調達という日々が続きました。
そんな毎日で、食材の容器包装ゴミがたくさん出るようになりました。なんとかならないものかと始めたのが、そのゴミを使っておもちゃを作ることでした。
キノコが入っていた黒いパックでトラックのフロントを作り、ラップの芯を束ねてタンクローリー、丸い容器はコンクリートミキサー車など、4歳の息子とあれこれアイデアを出し合いながら楽しく工作しました。
同じ材料でも私はトラックのフロント、息子はトラックの荷台というように、まったく違うものを想像したり、ホイールやタイヤに思いもよらない色使いをしたりと、改めて子どものクリエイティブな発想に驚かされ、有意義な時間を過ごしました。
ソーシャルディスタンスは2mから1mに緩和されたが、今なお継続中。
このように本来捨てるはずだったゴミを再利用したり、おもちゃを買うのではなく作ることでクリエイティビティが上がったことは大きな収穫でしたが、それ以上に考えさせられたのは、私たちの生活を取り巻く価値観の危うさでした。
昨日はゴミだったものがクリエイティブに活用される、グローバルに開かれていた世界がいきなり鎖国状態になる、勢いのあったビジネスがいきなり売り上げゼロになる、パッとしなかったものに急に脚光が集まる。
多くの人が価値観の崩壊や、これまで活用されていなかった物が急に息を吹き込まれる瞬間を、もの凄いスピードで目の当たりにしたことでしょう。