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燕市市役所職員と市内の有志者。協力して帰省自粛をしている学生たちに届ける物資の準備をしている

今、首都圏の大学に通う学生らが困窮している。緊急事態宣言が出され地元に帰ることもできず、一人暮らしで心細い日々を送る学生たち。ツイッターでは「バイト激減」というワードがトレンドに上がり、金銭面の問題が学生たちをさらなる窮地へと追いやっている。

そんな学生を支援しようと、新たな取り組みを始めた自治体がある。

支援を迅速に決断できたワケ


新潟県燕市は、感染拡大が広がる7都府県に初めて非常事態宣言が出された直後、同市出身の学生らに市産の米や手作り布マスク、味噌、漬物などを無料で送る取り組みを開始した。市内の有志者から「費用を工面するので、GWなどで帰省したくてもできない学生に、せめてコシヒカリを送ってあげたい」との声が挙がったことがきっかけだ。

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自粛学生の同市出身の学生たちに送った物資。段ボールの中には、米とマスクをはじめ、味噌や漬物、市長からのメッセージが入っている

しかし、ここまで迅速に学生への支援に踏み切れたのはなぜか。

地域が主体となって事業に取り組む際、当然ながら予算が必要となる。一体予算はどうしたのか。編集部では燕市に取材した。

同市役所職員によると、今回の取り組み費用(やモノ)は市内の事業者が用意し、学生への連絡や情報発信などについては市が協力をする、という仕組みであったため、すぐに踏み切ることができたという。

また燕市では東日本大震災を機に、自衛隊を退職した人を防災主幹として採用した。災害などの非常事態が起きた際、的確に迅速な行動がとれるよう、日ごろから準備を進めているという。

不安や葛藤、それでも届けたかった想い


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学生たちに送る物資を段ボールに詰める作業をする同市役所職員たち

とはいえ、市によると「お米とマスクを送ることで、地元からの無事を願う思いを伝えたい」というメッセージが学生らにきちんと届くのだろうか、どのように発信していけばより多くの学生たちに届くのか、という不安と葛藤は常に存在していたという。

市のHPに今回の自粛学生への支援の概要を出しただけでは、多くの人には伝わらないように思えた。そこで、SNSを利用して情報を拡散させていくしかないと考えた。

まずは、首都圏在住者へ燕市の情報共有や首都圏のメンバー間との交流を行う事業を展開している「東京つばめいと」のメンバーで、連絡できる同市出身の学生に連絡を取った。連絡の取れた学生たちに今回の取り組みについて共有し、そこからSNSでそれぞれ情報を拡散してもらうという、地道な作業だった。

同市役所の職員によると、若い人たちにとって、情報を得たり連絡をとったりする手段はSNSが中心であることから、市の事業の情報発信や連絡などにも、普段からSNSを使用しているという。

「その際、文章が長くならないよう、短く簡潔に書くことや、内容を確認したら、LINEスタンプを送る等のリアクションをお願いするなどしています。また、堅苦しく丁寧すぎる文章にならないよう、友人に話しかけるような、あえて、少しくだけた表現を使うように心がけています」

そんな中、4月10日の同市の公式ツイッターによる今回の支援の概要を記したツイートが2.1万リツイート、2.9万いいねと広く拡散され、3日後の朝には170件もの申し込みがあった。

それは、伝え方を試行錯誤した結果の賜物だった。SNSを通じたコミュニケーションにより、故郷を遠く離れ苦労する学生が、故郷を感じられる品を受け取ることができたのだ。

職員は「この案を聞いたとき、素晴らしい企画だと思い、絶対に実現させたかった」と振り返る。「新潟とは違い、首都圏などの状況は相当に厳しいと感じていましたので、ふるさとからお米や応援メッセージなどが届けば、学生たちの不安な気持ちを少しでも和らげてあげることができると思いました」

文=長谷川寧々 写真=燕市提供 

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