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2019.12.25

工場が観光地に 4日間で5万人超を集めた「燕三条 工場の祭典」

新潟県燕市・三条市で開催された「燕三条 工場の祭典」

あまり馴染みはないかもしれないが、日本全国には実は小さな工場が点在している。経済産業省の調べによると、製造業の全事業所数は 40万を超え、その大半が中小工場である。

近年、それら工場やものづくりの現場をそのまま公開し、見学や体験をしてもらうオープンファクトリーの動きが盛んになっている。

大田区の「おおたオープンファクトリー」、墨田区の「スミファ(すみだファクトリーめぐり)」、富山県高岡市の「高岡クラフツーリズモ」など、地域と一体となった取り組みが、全国各地で増加する中、多くの誘客に成功している地域が、新潟県の燕市と三条市だ。7年前から「燕三条 工場の祭典」を開催し、規模を拡大し続けている。

「物販」だけでは伝わらない

燕市と三条市は、新潟県のほぼ中央部に位置し、洋食器や金物の主要な産地として栄えている工業産業都市である。鍛造や金属加工などの優れた技術を持つ工場が約4000社集まり、人口比あたり「日本一社長が多い町」とも言われている。

「燕三条 工場の祭典」は、今年も10月3日から6日まで開催された。この期間、燕三条地域で参加した110を超えるものづくりの現場を見学・体験することができた。観光地ではないものの、この期間は新潟県内にとどまらず、都内からも多くの人が訪れる。


鍛造、機械加工など優れた技術を持つ企業が燕三条地域は多い

前身となったのは、2012年まで開催していた「越後三条鍛冶まつり」だ。物販や伝統技術を披露する産業祭で、それなりに集客をしていたものの、物販だけでは商品の魅力がいまひとつ伝わらなかった。参加者からも「本格的なものが見たい」「実際に現場をみたい」という声があがっていた。

そこで、ある会社が「この期間だけでも工場をオープンにし、製造現場を見てもらったら面白いのでは」と提案したことが、企画誕生のきっかけのひとつとなった。

これには、すでに地元のまちづくり会社であるMGNET社が、ツアー形式で工場巡りを実施していて、小規模ではあったが満足度が高かったことなども影響している。ちょうど、地域で新しい企画をやる気運が醸成されていたのだ。そして、近い産業を持っている都市として三条市と燕市が連携を図り、企画は両市を跨がり展開されることになった。
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文=内田有映 取材協力・写真提供=「燕三条 工場の祭典」実行委員会

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