そしてさかのぼれば14世紀、モンゴル帝国がユーラシア大陸の大部分を支配していたころ、やはりその軍隊はペスト(黒死病)を世界各地にもたらした。現在のコロナ禍はそんなことからも「ペストの21世紀版」、ともいわれているが、思えば現代起きている事柄の「伏線」はすべて、歴史に埋め込まれているのかもしれない。
従来のライフスタイルに比べて自由な時間ができた今、そんな「歴史」に思いをめぐらせてみるのはどうだろう。
たとえばこのたび新潮社から刊行された『「関ヶ原」の決算書』。天下分け目の決戦で、動いた金はいったいいくら? そもそも米一石って現代なら何円? 勝った家康はいくら儲かった? なぜ敗軍に属した島津家がおとがめなしで生き延びられた? など、歴史を「お金」で深掘りする。まさに、史上最も有名な戦の新たな姿を浮かび上がらせる1冊だ。
本書から一部を抜粋して紹介する。
戦争をするのに莫大なお金が必要なのは古今東西を問わない。近現代であれば、ハイテクの艦船や戦闘機、戦車などの装備費が戦費の中でも巨額を占めるだろうが、実際の軍事行動では兵員の移動費や糧食費などにも多くの費用がかかってくる。
戦国時代から近世始めにかけての合戦でも同様である。装備費=武具の調達のほかに、軍勢の移動費や糧食費にお金がかかった。特に、大規模な合戦では、お金の使い方は総力戦的であったろう。経済力の差が戦力の差に表れることになる。
本書では、天下分け目の決戦である「関ヶ原合戦」をお金の面から解読していこうと思う。前述したのは戦闘の際に実際にかかった費用についてであるが、このほか、当時は領地の増減が年収を左右した。勝者は領地を広げた。領地が広がれば年貢が増える。つまり年収が増える。対して敗者は領地をすべて失うか、大幅に減収となったのだ。