「関係者以外立ち入り禁止」の現場ノイズを音源に 企業とアーティストを繋げる新ビジネス

RUNSTUDIO/Getty Images


「関係者以外立ち入り禁止」の音


最近、ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response:人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良い、脳がゾワゾワするといった反応や感覚のこと)というノイズを聴く人たちが出現したこと。また、サンプリング音源としてノイズを楽曲に取り入れやすくなったということ。この2つの事実をもってしても、ノイズに触れる人たち(リスナー、アーティスト)は、いま確実に増え続けています。

さて、このノイズですが、なかでも私たちがビジネスとして特に注目したのが「企業の持つノイズ」でした。いままで、私が代表を務めるブランデッドオーディオレーベルSOUNDS GOOD(R)では、工業用のガスバーナーの音や、電車の車輪のヤスリがけの音などの「企業の持つノイズ」を集音してきました。

企業のノイズが、世の中にある一般的なノイズと最も異なる点は、いわゆる「関係者以外立ち入り禁止」とされている場所で鳴っている音であって、許可を得ない限りは集音できる場所に簡単には立ち入ることができない音であるという点です。

以前、あるアーティストと対談したときに聞いた話なのですが、世の中には膨大な数のサンプリング音源が存在しているが、これらは音楽で使われることを前提としているがゆえに、それだけでつくると、音楽がどんどん同じものにと集約されていってしまうのだそうです。

ところが、「企業のノイズ」は、企業の生産活動やブランドを持続させる活動のなかで、自然に生まれるもので、かつ一般的なノイズとは全然違うところに存在する音なので、それをサンプリング音源として使うことができるのはとても面白いとのことでした。

言い換えれば、企業のノイズは非常に「希少性が高いノイズ」だということです。

こうした希少性の高い企業のノイズを、サンプリング音源として価値付けをして、アーティストの人たちに提供し、制作された作品を通じて企業のブランディングに寄与する仕組みを、SOUNDS GOOD(R)ではつくっています。

企業に勤務している人は、是非、自社にある個性的な音を探してみてください。また、アーティストの人たちは「こんな面白い音があったら使いたい」といった要望を聞かせてください。いろいろな面白いノイズを集約して、企業とアーティストを繋げる仕組みを、この先もさらに進めていきたいと思っています。

連載:ノイズの可能性
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文=安藤 紘

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