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独立系配給会社と観る「映画のいま」

カンヌ国際映画祭の様子(c) Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF

緊急事態宣言の拡大で、日本全国の映画館で映画を観ることがほぼできなくなった。

私はビターズ・エンドという独立系の映画配給会社で、映画の買い付けをしている。ビターズ・エンドでは『在りし日の歌』という中国映画を4月3日に公開したが、同7日の緊急事態宣言を受けて劇場は休館となり、ほとんど上映できない状態だ。

『在りし日の歌』は、一人っ子政策下の中国で運命に翻弄され離れ離れになった家族たちが時を経て再会する物語。去年のベルリン映画祭で買付を行ってから1年を経て、ようやく公開日を迎えたところだった。山田洋次監督など錚々たる方々に応援してもらい、監督にメールインタビューを行うなど、多くの人の協力を得て、宣伝チームが丁寧な宣伝を行っていた。致し方ないことは重々承知ながら悲痛の思いだった。

5月以降もほぼ毎月のペースで新しい作品の公開予定があるが、先行きは不透明だ。弊社が製作に携わる映画の撮影現場もすべて中断になった。制作中の作品も、公開待機中の作品も、たくさんの人々の想いが詰まっており、観客にお披露目する「完成のとき」を待ちわびている。

全国的にも次々と上映中止・延期が決まり、その本数はすでに120本を超えた。映画配給大手12社の3月の興行収入総額は前年同月比7割減と報道されている。もし秋口に通常通りの興行や制作が再開できたとして、来年前半くらいまでは公開作品があるかもしれないが、休業中の損失補填の目処はなく、現場は困窮している。


『在りし日の歌』(c)Dongchun Films Production(公開情報は公式サイトで確認)

苦境にある映画業界


特に、資本の小さいミニシアターは存続の危機にある。映画人たちが立ち上がり、緊急支援活動を始めた。クラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」(発起人:深田晃司監督・濱口竜介監督ら)や、政府からの支援を求める署名活動「SAVE the CINEMA」(呼びかけ人:諏訪敦彦監督ら)などがそうだ。前者はすでに1.5億円以上、後者は7万5000人以上の署名を集め、ものすごい勢いで展開している。会員制度や物販などを利用して映画館単体でも支援を呼びかけ、その活動を映画サイトなどが積極的に発信している。この動きには勇気付けられる。

苦境にあるのは映画館だけではない。映画館に人が来なければ、配給会社や製作者も収入が途絶えてしまう。

アメリカでは、3月の段階で続々と、劇場公開から配信サイトへと鑑賞の場を切り替える作品が増えていった。ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞したばかりだった「Never, Rarely, Sometimes, Always」も、劇場公開後すぐに配信に切り替わったことが印象に残っている。映画祭での評価を追い風に、劇場での動員を見込んでいたはずだが、NYなどでのロックダウンを受けて早々に舵を切ったのも理解できた。

日本でも、『白い暴動』(ツイン配給)のように、公開直後ながら配信に踏みきった作品も出てきており、またアップリンクのように、自社の配信サイトへの流動を強化し寄付も可能にしているところもある。

想田和弘監督と東風がオンライン上に立ち上げた「仮設の映画館」は、考え抜かれた仕組みだ。観客が自分で観る映画館を決め、文字通り「仮設の」映画館でオンライン鑑賞をする。基本的には劇場公開と同様に客が料金を支払い、劇場と配給会社でその利益を分配するという。

製作・配給・興行と、映画ビジネスには有機的なサイクルがあり、どれも欠かすことができない。特に、「ミニシアター映画」と呼ばれるインディペンデント映画の場合、世界中から映画を買い付けてくる映画配給会社、興行する映画館(ミニシアター)があって初めて、日本での外国映画の鑑賞が可能になっている。小規模な日本映画も同様だ。

ドイツでは文化相が「アーティストは必要不可欠なだけでなく、生命維持に必要なのだ」と声明を出し、早い段階でフリーランスや個人事業者への経済的支援を行った。アメリカやイギリスでも支援の枠組みがあるが、もともと行政からの文化支援が乏しく、いまも迅速な補償のない日本では、製作者、映画館、配給会社、宣伝、メディア、それぞれに携わるフリーランスの人たちも、みな困難の中にある。

文=伊藤さやか

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