「関係者以外立ち入り禁止」の現場ノイズを音源に 企業とアーティストを繋げる新ビジネス

RUNSTUDIO/Getty Images

新型コロナウイルスの感染拡大で、家の中で過ごすことが求められているこの時期。自宅で仕事をしたり、普段の生活をしたりする時間のなかで、いままで以上に音楽を聴くようになったという人も多いのではないでしょうか。

また、DJの自宅からネットを通じて届けられる配信や、週末に行われるようになったオンラインの音楽イベントを、楽しみにしている人も少なくないようです。

そこで今回は、最近の音楽とは関係の深い「サンプリング」の話から始めてみたいと思います。

意外に古いサンプリングの歴史


ご存知の方も多いかもしれませんが、あらためてサンプリングをウィキペディアで調べてみると「過去の曲や音源の一部を引用し、再構築して新たな楽曲を製作する音楽製作法・表現技法のこと。または楽器音や自然界の音をサンプラーで録音し、楽曲の中に組み入れることである」となっています。

要は、いろいろな音から自分が使いたいものを抽出して楽曲の音源のひとつにするということです。

このサンプリングの歴史はかなり古く、ドイツの映画監督ヴァルター・ルットマンが、1930年6月13日にラジオ番組内で発表した、とあるサウンドトラックを切り貼りし、コラージュした実験的な作品が「最初」とされているそうです。

その後、何人かの作曲家やアーティストがこうした取り組みを実験的に行っていましたが、1948年頃、フランスのラジオ局技師ピエール・シェフェールと作曲家ピエール・アンリが、人や動物の声、自然の音や都市の騒音などを録音し、電気的・機械的に変質させ、組み合わせて制作する「ミュジーク・コンクレート」と呼ばれる音楽を生み出します。

いわゆる環境音や生活音である「ノイズ」を、楽曲へと取り入れていく流れがここから始まったのです。

こうした先人たちの試みにより、半世紀以上前までは実験的とされていたサンプリングという楽曲制作手法も、いまではさまざまなジャンルの音楽に取り入れられるようになり、世の中に存在するあらゆるノイズを音楽に取り入れることができるのだという価値観も定着しました。

さらに、現代においては、スマートフォンが普及したことでノイズを集音することが簡単になったことと、パソコン1つで楽曲をつくれる環境ができたことによって、誰もがノイズを音楽に「昇華」できるようになりました。

前回のコラムでも書いたように、私がノイズはビジネスに繋がると考えるようになったのには、こうした状況も大きく関係しています。
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文=安藤 紘

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