しかし近年、都心では高級ベーカリーが続々と出店し、パンの価値が認められつつある。そこに販路を拓けば状況は大きく変わるはず。地方のパン屋さんでも、パン職人のポテンシャルを発揮してもらいながら、正当な報酬を得ることができるようになるんです」
このような課題を解決するのが、同社の冷凍技術だ。パンの風味は、オーブンから出たその瞬間から徐々に失われていく。しかし、冷凍することによって、焼きたての風味を閉じ込め、その美味しさをそのまま保存することが可能になる。
パンフォーユーが提供する冷凍パンのイメージ
近年、テクノロジーの発達によって、冷凍パンの流通量は増加の一途をたどっている。
矢野経済研究所が2019年12月に発表した調査結果によると、市場規模は2014年度の1600億円から、2018年度には1765億円にまで拡大。ホテルやレストラン、カフェなどで提供されているおいしいパンにも、冷凍パンが使われることが増えているという。
同社の冷凍技術は、矢野氏によれば「95%の鮮度を保っている」そうだ。そのパンをレンジで温め直すと、湯気とともに、スーパーやコンビニのパンからは感じられなかった小麦の香ばしい香りがふんわりと漂ってくる。
矢野氏「僕自身、初めて冷凍パンを食べたとき、『こんなに小麦の香りがするんだ』とびっくりしました。これまで食べたパンと比較しても、冷凍パンのほうがおいしかった。
パンって呼吸をしているので、空気に触れているだけで、どんどん鮮度が失われていくんです。なので、お店で買ったパンを持ち帰って食べるよりも、できたてを凍らせたパンを再加熱した方がおいしい状態で食べられるんです。中国ではパンに蓋をして販売している店舗がほとんどになっているのですが、日本ではいまも店頭でもパンが丸出しの状態なので、そこでも鮮度が失われていっています。
冷凍でパンを販売することができれば、立地というデメリットがなくなるし、これまで焼きたてを販売するために早朝から昼までとしていた製造時間も自由に変えることができる。現在、多くのパン屋さんが直面している人材不足の解消にも効果を発揮するでしょう」
パンフォーユーが提携するのは、大手メーカーではなく、地方で頑張る町の小さなパン屋たち。冷凍パンを製造することによって、彼らの生活も徐々に変わっていったそうだ。
矢野氏「提携するパン屋さんの中には、これまで店を閉めていたけど、製造だけにして再び作り始めたパン屋さんや、昼以降は空いていた製造のキャパシティを埋めて生産性がアップしたパン屋さんがあります。冷凍パンが多くの課題を解決しているんです」