ビジネス

2020.04.27

サブスクが紡ぐ、偶発的な出会い。地方のパン屋にも適切な評価を

パンフォーユー代表取締役 矢野健太


パンがオフィスに届くことで生まれる新たな出会い


パンフォーユーを創業する以前は、群馬県桐生市で地域支援を行うNPO法人で働いていた矢野氏。この仕事である冷凍パンメーカーに出会ったのをきっかけにして、冷凍パンの個人向けオーダーメード事業をスタートした。

小麦やバターなどをオーダーメードして好みのパンを提供するこのサービスは、クラウドファンディングでは好評だった。しかし、実際にサービスインしてみると、多くの注文は一度きりで終わり、リピーターまで育ってくれるユーザーが少なかったという。

矢野氏「ユーザーインタビューをしてみると、オーダーメードでパンを発注できることに魅力を感じるのは男性が多くて。パンのメイン購買層となる女性は、ランダムで届いたパンの中からつど好きなもの選んで食べることに喜びを感じることがわかりました。むしろ食べ比べできるような機会を提供することが大事だったんです」

2018年、同社は個人向けオーダーメードから、新たなビジネスモデルを模索した。「とにかく一度食べてもらえるような仕組みにしなければ、冷凍パンの魅力を伝えられない」と感じたことから、オフィスで働く人々に福利厚生としてパンを届けるモデルにシフト。このサービスが、約1年で150社あまりの導入数を誇るまでに成長した。

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オフィスパンスク導入数の推移

矢野氏「導入しているのは、社内カフェテリアなどを設計したものの、コミュニケーションが生まれにくいといった課題を抱えている企業が多いですね。毎月、異なったパンが届くオフィス・パンスクを導入することによって『今月はこんなパンが届いてる』と、社員間のコミュニケーションを生み出すきっかけになっています。

それは少量多品種で製造可能な地方のパン屋さんとの協業だからできること。時には、唐辛子を入れたものや、珍しいフルーツを使ったパンも提供して、喜んでいただいています。当初はパン職人にとっては定番メニューを作る方が良いと考えていたのですが、『こんな材料使ったことない』と、チャレンジングな機会として楽しみながら作ってもらっています」

オフィス・パンスクが導入されることによって、オフィスには毎月異なるパンが届けられる。そこでは、パンの配送に留まらず、新たな「出会い」が演出されるという。

矢野氏「オフィス・パンスクでは、2つの面で出会いが起こっています。まず、本当においしいパンが持つ小麦の香りとの出会い。そして、毎月届けられるさまざまな種類のパンとの出会い。

インターネットによって情報が取得しやすくなったことで、偶発性のある出会いが減っているんですよね。ネット上にある情報に頼ってしまうと、街のパン屋に訪れる機会もなかなか生まれません。オフィス・パンスクでは、通常だと出会わないような地方のパンと出会うという偶発性を提供することを大事にしていきたいですね」

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執筆/ 萩原 雄太 編集/庄司智昭 撮影/須古恵

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