ビジネス

2020.04.24 08:30

町工場の正直さが生んだ、「万人受けしないシャンプー」の開発秘話




トレンド、常識に捉われない開発環境


市販のシャンプーはOEMで作られてるものが少なくはありません。大抵、決められた原価内に仕上げないといけないので、使える原材料にも制限があります。製造工程にも基本的には決められた基準があります。シャンプーはそうした様々な制約の中で作られていくことが大半です。

また、一般的にはシャンプーの開発の前には、マーケティングや市場調査が行われ、そこでお客様の要望やニーズを洗い出します。そこからその商品の効果やアピール要素を先に決め、その効果が謳えるよう成分を調整しながら開発を進めていくのです。しかし、こういった開発スタイルでは、その量では効果はほぼないのに、効果を謳うためだけに微量の原料を配合したり、ということが頻繁に行われています。

──最近は「ノンシリコン」を謳ったヘアケア商品をよく見かけます。

「ノンシリコンシャンプー」と謳ってると、シリコンが悪いもので、それが入ってないシャンプーは良いシャンプーだと誤解されてる方も多いと思います。

先に言っておくと、シャンプーには、シリコーンを配合する場合の方が少ないです。シリコーンが積極的に用いられるのはコンディショナー等の方です。 「ノンシリコンシャンプー」と謳ってるものでも、同シリーズのコンディショナーではシリコーンを配合してるものは多くあります。シリコーンが悪い成分ならコンディショナーに使うのも止めたほうがいいのではと思うのですが...

そもそもシリコーン自体悪い成分ではないんです。人体への影響もないし、毛穴に詰まって呼吸ができなくなるという話も誤解です。シリコーンは、うまく使えば、髪に非常に良い働きをもたらす成分です。でも、原料としてはすごく高額で、配合しないほうが原価は安くなります。この辺りの事情は、一般の方は殆ど知らないと思います。

12/JU-NIは、こういった一般の人々が持つイメージや誤解に乗っからず、「本当にいいもの」を正直に作ろうとして開発されたものです。なので一般的なシャンプーでアピール材料として使われる要素は、12/JU-NIには殆どありません。もちろん「ノンシリコン」ではありません。

当初の見積もりを越えた支援を獲得。再販を求める声も


──なぜ、Makuakeを活用することにしたのでしょうか?

まずサンプルを170人に配り、アンケートを実施しました。結果はかなり良かったです。驚いたのは、通常のモニター調査では来ないような、「いつ発売ですか?」「発売されていなくても、中身だけほしい」といったメッセージが20人くらいの方から来たことです。熱狂的に支持してくれる人たちがいるのだなと実感しました。とはいえ、実際に発売して買ってくださるかは不透明なところもありました。

そこで、こういう極端な商品は、クラウドファンディングのようなファンの熱量を可視化できる仕組みが向いてるのではないかと思い、Makuakeに相談しました。

Makuakeのご担当者は「シャンプーは分野的に難しいので、厳しいスタートになるかもしれない」という見解でした。なので、目標額の設定は低く見積もりました。公にした目標金額は30万円で、裏目標として100万円を超えればよいなと。
次ページ > 「12/JU-NI」は木村石鹸じゃないとできなかった

文=大木一真 人物写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事