ビジネス

2020.04.24

町工場の正直さが生んだ、「万人受けしないシャンプー」の開発秘話

代表取締役社長の木村祥一郎


実際にプロジェクトを公開してみると初日で150万集まり、逆に目標が低すぎて支援者に申し訳なかったなと。最終的には目標額の1699%達成で500万円以上の応援購入が集まりました。

──木村さんが応援コメントすべてに返信されているのも印象的でした。

プロジェクト公開初日は大変でしたね……。でも、サポーターさんはこの応援ページもよく見られているとのことだったので、丁寧に対応することを心がけました。

原材料の問題もクリアし、4月から一般販売へ




──なぜ、木村石鹸は「12/JU-NI」を開発できたのでしょうか?

木村石鹸には、開発したい人はなんでも開発してもいいという社内ルールがあります。ただし、商品化するのは、最後まで開発者自身が好きだと言えるものを作ることを条件としてます。

商品を世の中に出した後、あまり評価が良くなくとも、開発者が「この商品が好きなんだ」と責任を持って言えれば、その商品も救われると思うのです。だから、多胡から「すごいシャンプーができた!」「これまでのライフワークの中で最高傑作」と自信満々に言われたときは本当に嬉しかったです。

多胡自身も話していましたが、「12/JU-NI」は木村石鹸じゃないとできなかった商品だと思います。自由な開発環境、原料、製造の縛りなく、開発者が時間をとって開発に集中できる環境は、「いいもの」を作るためには必要です。

──新型コロナウイルス感染症の拡大で市場も大きく変わりましたが、4月に一般販売を開始されました。

すでに購入していただいた700人以上の方からリピートしたいとの声もあり、早く供給したいな、と思っていました。

ただ、高価な原料が多いこと、また製造が複雑でシビアであることから、現状でも大量に生産はできない状況です。なので、一回あたりに製造する量を固定して、その分での限定販売を始めました。価格も安くはなく、けっして万人受けするシャンプーではありませんが、“正直な処方”でつくるヘアケアブランド「12/JU-NI」をぜひ一度試していただきたいですね。

──困難な状況かと思いますが、今後ブランドをどうしていきたいか。その考えを最後にお聞かせください。

髪に悩む多くの人に使ってもらいたいとは思ってますが、何万本、何百万本という単位で売れていく商品としてはイメージしていません。

理想はこのブランドを本当に必要としてる人や、愛してくれてるファンに、何年、何十年と使い続けてもらえるような、そんなブランドに育てたいと思ってます。

何万本売れた、何百万本売れたと、商品の売れた本数を誇るのではなく、単位は何百、何千かもしれないですが、「何人」のすごくコアなファンに熱狂的に支持されているんだと、自信もって言えるようなブランドに育てたいと思っています。

文=大木一真 人物写真=小田駿一

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