ビジネス

2020.04.20

月3万円で通院なし 新時代の歯科矯正サービスが人気のワケ

マウスピースのD2Cサービス「Oh my teeth」


いままでの歯科矯正の業界は、どちらかというと職人の世界に近かったように思います。理論よりも慣例や職人の経験が重視されるといいますか……。統計的な品質管理も行われていません。「着用時間が足りていない」と、歯が動かない責任をユーザーに押し付けるドクターもいます。私たちはITを活用して、歯科矯正の業界をオープンにして、“製造業化”していきたいと思っています。

なぜマウスピースひとつの原価が80万円なのか


──サービス構想段階で参考にしたサービスはありますか?

いまはベンチマークしているサービスはありますが、2018年の構想時はありませんでした。きっかけは、私が出資先のアメリカの会社で働いていたことです。アメリカは身だしなみに気を遣う人がすごく多いんです。一緒に働くコーダーも、みんな歯がキレイで、だんだん自分が恥ずかしくなってきて……。

そこで歯科衛生士として働く妻に話を聞いてみると、先ほどお伝えしたようなユーザーペインがつぎつぎと出てくる。私自身、矯正用のマウスピースを手にとって見ると「コレで80万円?」と目を疑いたくなりました。

歯科クリニックを回って「なぜ80万円もかかるんですか?」と聞いても、要領を得る説明はされないまま。「こういうものだから」の一点張りでした。でも、だからこそ産業化すれば「価格」というユーザーペインは解消できると確信しましたね。



──業界の慣例みたいなものに風穴を開ける、と。ただ、そうなると業界からの反発も強そうですが……。

おっしゃる通りです。Oh my teethの開発にあたり協力を仰ぐためにたくさんのドクターのところへ足を運んだのですが、ほとんどは怒られましたね。「素人が入ってくるな」「なぜわざわざ安くする必要があるんだ」と。でも、何とか共感してくれるドクターを見つけて、事業化をスタートしました。

──それからはどのようにしてローンチへと結びつけたのでしょう?

地道なユーザーテスト、ですね。競合のユーザーや海外大手マウスピースメーカーのユーザーにヒアリングして……すると結構ネガティブな情報も出てきたんですよね。

たとえばドクターとの関係。カウンセリングで、高圧的な対応をされたことがある人もいると思います。でも、「ドクターが自分たちよりも偉い」なんてことはないですよね。ドクターとユーザーはフラットだし、医療行為は定量的にデータで評価されるべき。これが、Oh my teethのカルチャーです。カルチャーフィットしないドクターはお断りしているほどです。

私たちももともとは間接販売モデルも検討したのですが、既存のクリニックと一緒にやっていく方法だと顧客体験をコントロールできない。送客はしたけど、ドクターの対応がイマイチ……みたいなことも起こり得るんです。だからこそ、あえてスキャニングステーションを私たちが運営し、すべてのユーザー体験を私たちがコントロールできるモデルをとっています。
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文=田中嘉人 人物写真=小田駿一

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