経済支援も始まった。米議会で可決された総額2兆ドル規模の経済対策法案により、国民大人1人あたり1200ドルが支給され、4月下旬から申請なしで順次口座に振り込まれる。また、失業給付の拡大や、住居や商業テナントの立ち退き、差し押さえの延長、無料で毎日3食の食事提供などの生活支援策も行った。
「やれることは全てやった」と語るクオモ州知事。だが、一度、広がってしまった感染を止めるのは容易くない。最初の感染確認から、わずか5週間あまり。ニューヨーク州では4月15日の時点で、21万3779人の感染が確認され、そのうち1万1586人が命を落とした。
死者数は、州だけで、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロによる米国全体の死者数2977人をすでに3倍以上も上回っていることが、かつてない異常事態ということを物語っている。
日本はニューヨークの教訓を生かせるのか
日本が同じような道を辿った場合、事態はより深刻なものになるといわれている。米国の国立生物工学情報センター(NCBI)では、集中治療室のベッド数は、米国では人口10万人当たり34.7床であるのに対し、日本はその5分の1ほどの7.3床にとどまると指摘する。
また、日本集中治療学会は、4月1日、緊急声明を発表し、高度な専門性や感染防御の観点により約4倍のマンパワーが必要な感染症の集中治療だが、医師や看護師らの人員不足で、重症患者の受け入れは全国で1000床に満たない可能性があると、集中治療の脆弱性に危機感を示した。
ワシントンD.C.の病院に勤務する医師も「一気に患者さんの数が増えると、きちんとした集中治療を受けられずに亡くなっていく人が多く出てしまう。助けられた人も助けられないという事態が起こる」と警鐘を鳴らしているという。
個人レベルでは何ができるのか。「外出時のマスク着用、石鹸を使った入念な手洗い、うがい、人が大勢集まる場所には行かないというのが基本。また、新型コロナウイルスを避けることばかりに気を取られているが、同様に自分の免疫をあげる努力をするのも必須。ワクチンが開発されない限り、特効薬はないので、免疫力を上げることが、予防にも、かかってしまった後にもとても大事」と前出の日本人女性は自らの自衛策について語っている。
また別の女性からは「もう国民は皆、政府を待たずに自分で危機感を持ってもいいと思う。1人1人が新型コロナウイルスに対して恐怖の認識があれば、外に出かけたりしないはずだと感じている」と伝えられてきた。
安倍総理大臣は7日、東京を含む7つの都府県に対し、緊急事態宣言を発出。16日には、対象地域を全国に拡大し、感染症による国内初の宣言に踏み切った。だが、「日本式」と言われるその内容は、海外から危機感に欠けるとの指摘もある。感染経路が不明の市中感染が広がるなか、私たちはニューヨークの教訓を生かせるのだろうか。日本は、いままさに正念場を迎えている。