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「グッドビジネスは魅力的なアートか?」 ~現代アートとブランドビジネスの相関性

Westend61/Getty Images

まず、連載の初回にあたって、このコラムのテーマを述べておこう。それは、「グッドビジネスは魅力的なアートか?」である。ご存知の方もいるとは思うが、これは、「Being good in business is the most fascinating kind of art.(上手くいっているビジネスは、最も魅力的なアートである)」というアンディ・ウォーホルの言葉から引用している。

私の本業は、マーケティングとブランディングだ。つまりは「付加価値を創造し、モノを売ること」が仕事である。

現代アートについては、書道家の武田双雲氏が、現代アート作家の「Souun」として活動を始めたときからプロデュースしている。作品づくりの文脈やストーリー開発、メディア展開や企業コラボ、そして彼の初めての大規模な個展「ピカソ、ごめん、展。」の名称から仕様、これら彼の現代アート作家としてのローンチプランを詳細まで担当してきた。

つまり、私は、アートにおけるブランドマーケティングを「試みている」わけだ。

こうした経験や、現代アートの名だたるギャラリストたちからレクチャーを受けるなかで、私は、「ブランドとアートの“心理的購買メカニズム”は、本質的に同じではないか」という結論に達したのだ(もちろんアートの持つ投資的側面は別として)。 

アートはビジネスの100年先を走っていた


数年前から、「ビジネスへの効用としてのアート」というイシューを書籍などでよく見かけるようになったが、その際には、おおむね次の2つくらいの文脈で語られることが多い。

1つは、「直感や感性がビジネスにおいて重要(有効)であり、アートによってそれを磨くことができる」という話。もう1つは、「グローバルなビジネスの場においては、教養としてのアートが役に立つ」という話だ。

しかし、この2つ以外にも「ビジネスへの効用としてのアート」を考えるうえで大切なことがある。それは、ビジネスとアートにはとても大きな類似点があるということだ。売り方やブランディング、感動の届け方に至るまで、両者の「心理的購買メカニズム」の本質には、大いなる関連があるのだ。

ブランディング(=売り物に付加価値をつける)の手法は、モノを売るために使われる100年以上も前から、アートのシーンでは使われてきた。つまりビジネスにとっては大いなる先達となるわけだ。ブランドマーケティングを学ぼうと思ったら、歴史的にはるか先を走っているアートの付加価値のつけ方を学べばよいわけだ。

ただ、アートでは、その仕組みは明文化されていない。商品としてのアート作品の価値についてはかなり研究されていて、「なぜアートが価値を持つのか」という問いにおいては、ブランドの価値づけより深い考察がなされている。

しかし、その価値創造の仕組みは、残念ながら分類、整理されていない。アートの場合、売り場や流通現場は、アートフェアやオークションであり、メーカーはプライマリー作品の販売を担うギャラリーであり、そこにはマスマーケティングは必要がなかったからだ。

売り方の論理を普遍的に構築してきたブランドマーケティングと、価値創造に優れたアート、双方の共通点を解き明かして、理解することで、ビジネスに活用できる視点を得られるはずだと考えている。

文=高橋邦忠 構成=松崎美和子

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