経済・社会

2020.04.19 11:30

日本はニューヨークの教訓を生かせるか 感染爆発のNYから伝えられた声 

Roy Rochlin/Getty Images

Roy Rochlin/Getty Images

「とにかく救急車のサイレンが鳴り止まないんです」

新型コロナウイルスの感染拡大が続くニューヨークから、現地在住の日本人女性は、このように隠しきれない不安を伝えてきた。今回のコラムでは、彼女の言葉からニューヨークの現状をお伝えしたい。

ニューヨークは、この1カ月でがらりと様変わりした。新型コロナウイルスの感染拡大で、ほぼ全ての経済活動が停止し、24時間眠らない摩天楼の景色は影を潜めた。市民のオアシスであるセントラルパークや観光名所のセント・パトリック大聖堂には、患者を受け入れる臨時ベッドが並んでいるという。

ニューヨーク州の新規感染者数が100人を超えたのは、約4週間前の3月12日だ。その約3週間後、東京都では4月4日、初めて1日当たりの感染者数が100人を超えた。現地の医師のなかには、東京がニューヨークと同じ道を辿るのではと懸念する声も多い。

中心地区のマンハッタンは、高層ビルが密集し、働く人の多くは、周辺の地区から地下鉄やバスなどの公共交通機関で通勤するなど、移動手段やライフスタイルが東京と類似している。また、言うまでもなく、レストランやバー、劇場など人の集まる場所も多く、東京に最も似ている海外の都市の1つだ。

ロックダウンを支持する人は圧倒的に多い


ニューヨーク州で初めて感染確認が報告されたのは3月1日。3月7日にはアンドリュー・クオモ州知事がいち早く州の緊急事態宣言をし、消毒剤の配布などを手配した。だが、このときはまだニューヨークでは楽観的な空気が漂っていた。ニューヨークに暮らす知人の日本人女性は次のように語る。

「当初ここまで感染が広がるとは思っていなかったから、アクションが遅かったと思う。映画館、ミュージアム、劇場は、手洗いを呼びかけるものの、自粛までするところはなく、何とかしてオープンする方向で動いていた。観客も公演している限りはシアターに足を運ぶ人が多かったし、そのころはあまり深刻に新型コロナの状況を捉えてなかった」

やむをえず、職場に行かなくてはならない人もいる。人々の生活を成り立たせるうえで必要不可欠な食料品の販売や補充、宅配、ベビーシッター、住宅やビルの清掃、高齢者や障碍者の介護、レストランの店員といった仕事は、現場で従事することが前提だ。

ニューヨーク市で約20%を占める低所得者層は、こうしたサービス業に従事する人が多く、テレワークへの置き換えが難しいのが実情だ。また、さまざまな宗教が入り混じるニューヨークでは、一部の礼拝や結婚式などによるクラスター感染が疑われたこともあり、感染の拡大にはさまざまな要素が複雑に作用しているといえよう。

その後も、感染者の数は増え続け、収束することはなかった。街が大きく変わったのは3月12日。クオモ州知事は、感染拡大を防ぐために500人以上が集まるイベントなどを禁止。ニューヨークを象徴するブロードウェイなどの劇場が一斉に公演中止に踏み切った。

17日には、レストラン、バーなどの飲食店に対して、ダイニングスペースを閉鎖して、テイクアウトのみの営業を要請した。そして22日からは、社会生活の維持に必要な業種以外の人々は、可能な限り外出をしないよう、外出禁止令が施行された。他者とは約2メートルの距離を取ることが要請され、徹底しなかった場合の罰金は500ドルから1000ドルに引き上げられた。

生活に不便することも多いが、それでも「ニューヨークでは、ロックダウンを支持する人が圧倒的に多い。当初は、仕事がなくなる不安から働こうとする人もいたので、要請のレベルが低かったら、感染はもっと広がっていたと思う」と前出の女性は語った。
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文=丸山裕理

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