日本のワクチンはなぜ「ガラパゴス化」したのか。その単純な理由

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多数の著書がある、神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野教授の岩田健太郎氏による新刊『ワクチンは怖くない』(光文社新書)が刊行された。

同書は、「インフルエンザワクチンは結局、打った方がいいのか」「『子宮頸がんワクチン』って、実際どうなのか」「何度も同じワクチンを打たないといけないのはどうしてか」などワクチンに対する疑問を解消し、本当の「健康」をもたらすワクチンとの付き合い方を伝授している。

以下、本書から抜粋して紹介する。


現在日本には、ワクチン製造販売業者および輸入販売業者が15社あります。化血研、日本ビーシージー、北里第一三共ワクチン、武田薬品、阪大微研、デンカ生研、MSD、GSK、サノフィ、ファイザー、JV、田辺三菱、第一三共、アステラス、北里薬品です。

日本ではワクチン事業を予防接種法に準じた国策とし、国内ワクチンメーカーを保護しようとし続けてきました。そのことは、海外のワクチンメーカーの排除を意味していました。

1980年代以降のポリオはすべてワクチンが原因


これにより、国民に被害が出た例もあります。

例えば、日本ではポリオの予防に経口生ワクチンを使用してきました。効果の高かった生ワクチンですが、日本でのポリオ発生がほとんどなくなった後は、その副作用のリスクのほうがずっと大きくなってしまいました。


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生きているウイルスであるポリオ生ワクチンそのものが、まれではありますが、小児麻痺の原因になってしまうのです。そのため、米国では2000年からポリオ生ワクチンを、小児麻痺を起こさないより安全な不活化ワクチンに切り替えました。

しかし、日本では不活化ワクチンの導入が遅れました。1980年代以降のポリオはすべてワクチンが原因となっているワクチン関連麻痺だったにもかかわらず、です。

この遅れは日本の官僚の誤謬を認めたがらない体質が寄与していると私は思っています。しかし、それ以外の原因も遅延に寄与していました。

それは、国内メーカーの開発の遅れです。不活化ポリオワクチンは海外ではずっと前から市場に出ていたのです。それを輸入しなかったのは、国内メーカーの開発が終わるまで待った、と考えるのが自然でしょう。
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