数値が異常でも病気とは限らない? 検査結果を読み解くトリセツ

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健康診断報告書を子供の頃の「通信簿」のごとくこっそりのぞき、一喜一憂するわれわれ。だが、「数値」の裏には意外なワナも潜んでいる──。『医者のトリセツ 最善の治療を受けるための20の心得』(世界文化社刊)から抜粋して紹介する。


検査結果の数値が基準値からはみ出ると、患者は心配になり、医師は何とか手段を講じようと動きます。

しかし、数値の持つ意味合いはさまざまで必ずしも病気と直結はしません。「どれくらい深刻ですか?」のひと言が、自分自身の安心にも、不必要な治療を免れることにもつながります。

その数値は心配なのか? わかりにくい検査結果


検査結果を知らされる前は誰しも少なからず緊張し、不安を抱くものです。示された数値が正常範囲を大きく超えて高かったり(低かったり)すると、大変なことになったと目の前が真っ暗になるかもしれません。

しかし、数値だけで病気と診断されるケースはむしろ少数。たとえ基準値から大きく外れていても、さほど心配のない場合が意外に少なくありません。患者さんにはわかりにくい検査の数値の意味。いったいどうとらえたらよいのでしょうか。

血液検査の数値が病気と直結しているものに、糖尿病と脂質異常症があります。血糖値が診断基準に当てはまれば糖尿病、コレステロール値や中性脂肪が異常値を示すと脂質異常症と自動的に病名がつきます。すると多くの医師の思考は、放っておいてもまず大丈夫な場合でも、何らかの治療を施して異常値を正常範囲内に戻そうとする方向に働きます。

しかし、数値の異常と病状の深刻さは必ずしも一致しないのです。

たとえば中性脂肪が300mg/dlだとしたら(基準値は32〜134mg/dl)、あまりの高さにびっくり仰天するかもしれませんが、実はそれほど大したことではありません。一方、血糖値が300mg/dlだったら(基準値は70〜130mg/dl)……これは大問題。即、入院の可能性もあります。その違いは患者さんには判断できません。医師に、自分の数値はどれくらい深刻なのかを確認してみましょう。

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イラスト/平松昭子

この患者さんからの問いかけが、「数値的には病気だけれど、治療せずに様子を見てみよう」との選択肢につながることもあります。
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