数値が異常でも病気とは限らない? 検査結果を読み解くトリセツ

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腫瘍マーカーの数値とがん発症の可能性は結びつかない


一方で病気と直結しない数値も多くあります。患者さんが最も翻弄されがちなのは、検診目的で受ける腫瘍マーカー(CEA)検査だといえます。がんが特異的に産生する物質を、血液検査により測定することが可能です。

しかし、腫瘍マーカーの値が高いという報告を受けたとしても、多くの場合それだけでがんが体の中に存在する可能性が高いとはいえません。逆に数値が基準値以内ならがんが全くないとも言えません。前立腺がんは例外とされていますが、ほとんどの早期がんで腫瘍マーカー値が上がることはありません。数値と病気の本態がかけ離れているのです。

とはいえ、腫瘍マーカーの値が高いとなれば多少の不安は残るもの。定期的に検査を受けることをすすめられ、身体的負担や拘束時間が増えるリスクも大いにあります。人間ドックなどで腫瘍マーカーのオプションがあったときには、メリット・デメリットを考えて必要性を判断するのがよいでしょう。

Case 1


「貧血です。このままだと大変なことになりますよ……」と、医師に脅かされた。

健康診断の結果、ヘモグロビン値(赤血球中の血色素の値。女性の基準値は12.1~14.6g/dl)が9.8g/dlで「異常」との結果が出たAさん(48歳)。自覚症状は何もなかったのですが、少し心配になって近所の内科を受診すると「鉄欠乏性貧血」との診断「このままだと大変なことになりますよ」といわれ、しばらく飲み続けるようにと鉄剤を処方されました。

日常生活に何の支障もなく過ごしているのに、突然「患者」にされてしまったことに納得のいかないAさん。治療は本当に必要なのだろうかと半信半疑です。

検査結果のケーススタディー 患者の心得:「放っておいたら、一カ月後にどうなっているか?」を聞いてみる。

生理がある女性に、体質上貧血が見つかることも少なくありません。私でしたら「やや貧血気味ですね。鉄分の多い食事を心がけましょう」程度の対応をするかもしれません。鉄分の錠剤で具合が悪くなるケースも結構あります。杓子定規に正常値にこだわる必要はないかとも思います。

医師は、往々にしてそのような言葉で患者さんを「脅し」がちです。納得できない場合は「放っておいたら一か月後、私はどうなっているでしょう」と聞いてみましょう。意外に心配のない場合も多く、「では、しばらく様子をみますか……」と医師のスイッチが切り替わるきっかけにもなります。
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