あれだけ大きな被害を受けたイタリアでは、次の波の徴候が始まり、ロックダウンを3週間延長しました。日本はいま第2波で危機的な状況ですが、その先は長いのです。世界恐慌以来の最悪の経済危機といわれています。
仕事の中で、3密を避け社会的距離をとることが難しい業種は、特に大きな影響に晒されてしまいます。例えば飲食業。日本の食は世界で高く評価され、多くの訪日観光客が食を目当てにやってきていますし、日本の食文化は、国の宝として守るべきだと思います。しかしながらこうした業種が、感染リスクをコントロールできない状況で営業を続け、感染爆発を起こしてしまうと彼ら自身も再開の目処が立たなくなり、全産業が大きな影響をうける状況になってしまいます。これは海外の事例をみれば明らかです。
今回の調査で働き方や過ごし方によって感染症に対するリスクが大きく違うことがわかりました。リスクに対してすごく脆弱な働き方は、ただちに対策が必要です。
長期戦が予想される新型コロナウイルスとの対峙においては、国は休業補償などのサポートを行うことで従業者と顧客の健康を守り、休業期間中に新しい営業の形を考えることが1つの方法だと考えています。また、多くの業種では当面の間、今までと同じ業態で仕事を行うことは難しくなります。
それぞれの産業が「感染症に対応しながらどう働くのか」をデザインする必要があります。それこそ「リモートワークはできない」ではなくて、リモートワーク以外は働く許可が出ない、というレベルで考える必要があります。
緊急事態宣言に基づいた対策により、今後感染者数を抑制できたとしても、油断すればすぐに感染拡大に至ります。中国も全く警戒を緩めていませんし、小康状態に入っていたシンガポールもセミロックダウン状況に入りました。感染症に対応した働き方や過ごし方をデザインしたうえで、さまざまなデータやアプローチを組み合わせて動向を見ながら、社会活動の取り戻し方や広げ方を考えていかなくてはなりません。緊急事態宣言の期間は、各産業がどう立ち上がるかを考える重要な時期でもあるのです。
※2回目は『民主主義国家でICTを使ったコロナ追跡は可能か? 宮田教授が解説』
みやた・ひろあき◎2003年3月東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程、同分野保健学博士(論文)修了。早稲田大学人間科学学術院助手、東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座助教を経て、2009年4月より東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座准教授。2014年4月より同教授(2015年5月より非常勤)、2015年5月より慶応義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授。