この調査を実施したもう一つの背景としては、その時点で政府は感染が確認された患者(PCR検査の陽性者)を軸にした限られたデータしか無かったため、「その外側」の状況が分かるデータを補完する必要があったということです。日本は当初の方針でPCR検査の実施を一定の基準で絞っていたこともあり、基準の中で陽性と判定された人以外でどれほどの人に、関連症状があるのか分かっていませんでした。
外側の状況が分かると、医療需要の予測に役立ちます。新型コロナウイルスでは、だいたい熱が出てから、数日経ってから相談して、その後に新型コロナ外来で検査を受けるという流れなので、一定期間のタイムラグがあります(初期は10日、3月時点では5日くらい)。発熱の段階で把握すれば、各都道府県は今後、相談支援や外来に来る人がどの程度なのか、医療需要を予測して、準備を行うことができます。
新型コロナウイルス感染症にかかる相談窓口について(東京都保健福祉局)。
これまで厚労省のクラスター対策班が感染者の経路を追いかけて、感染をコントロールしてきましたが、それが追えなくなると、打ち手がなくなってしまう。外側で現実を把握するためのアプローチを作っておこうと、クラスター対策班とも相談して、2月ごろから県顧問をしている神奈川県で先行の取り組みを始めました。
LINEは3月30日に厚労省と協定を結び、調査に協力してくれました。LINEから提供されたデータは厚労省が分析します。データは匿名化され、電話番号など個人を特定できる情報は含まれません。個人情報保護法に従い、公表されている利用目的を超えた活用はできません。また、一定期間が過ぎたら削除します。