親が認知症になったら費用は? 給付金を受け取れる「保険」という選択肢

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平均寿命は延びているが、自立して暮らせる健康年齢を伸ばしていければ、介護の期間は短くできる。その前提に立てば、介護状態になる要因の第1位の認知症について、なる前に「予防」することが、マネープラン的に言っても、介護に備える資金を減らして、自身の老後の暮らしに潤いを残せるものとなるはずだ。

たとえば、家電操作に途惑うようになったり、趣味が楽しめなくなったり、短時間で何度も同じ質問を繰り返すようになったり、気づかず同じ商品を買うことが多くなったりといった、「いつもと違う」小さなサインに気づいたら、「気のせいかも」と思わずに、MCIを疑ってみるのがおすすめだ。

受診にあたっては、専門外来(もの忘れ外来)や神経科、老年科などがおすすめだ。病院によっては、「もの忘れドック」の脳画像検査(MRI検査)などで現在の脳の状態を詳しく検査できるところもある。MCIと診断されたら、半年に1回程度の定期的な診察を受けながら、医師の指導のもとで回復を目指していくことになる。

MCIで給付金を受け取れる認知症保険も


マネープラン的な視点から言えば、認知症と診断されて要介護状態になって公的介護保険を使うと、毎月継続的に介護の自己負担がかかるようになる。

一方、MCIの段階で、認知症デイケアなどで認知機能向上につながる知的・身体的トレーニングを行って、快方に向かったり悪化を抑制できたりするほうが、介護・認知症にかかるお金を断然少なくできる。

また、最近流行りの「認知症保険」でも、MCIという言葉を目にするようになってきた。

認知症保険は、認知症で所定の要介護状態と診断されたときに一時金や年金が受け取れる保険で、単品で販売されたり、医療保険の特約などで組まれたりして扱われている。その保険から保険金や給付金を受け取れるトリガーの1つに、最近、MCIを導入しているものが、少しずつ増えてきているのだ。

たとえば、住友生命の医療保険「認知症プラス」では、MCIと診断されたときに50歳以上で最大100万円の給付金が受け取れる。さらに認知症と診断された際には最大1000万円の保険金を受け取れる仕組みになっていて、治療費用にも活用できる。

同社の認知症保険では、生涯に渡る認知症リスクのうち生活習慣や運動習慣などで改善できるものが35%あるという調査を受け、Vitality特約を付けることで、その意識と行動が高められる商品設計にもなっている。

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出典:住友生命資料

さて、FPの相談に乗っていると、親の介護について「想定外」な事態と考えている人はとても多い。

介護は、自身のライフプランに、突如、災難のように降りかかってくるというイメージのため、場当たり的になることで対応が遅れたり、余分に費用がかさんだりして、家計に与えるダメージは大きくなる。
 
そのため、親が健在な相談者には、必ず、もしも親の介護が必要になった時にどうするかを尋ねるようにしている。身体的に介護要員として参画できないときにはお金を出す心積もりをしておくようにとアドバイスしているが、「想定内」にしておけば、まさかのときに慌てなくて済む。そういう意味で、貯蓄や保険で何らかの備えをしておくと安心だ。
 
前にいらっしゃった、歳の差婚の女性の相談者は、「うちの両親、夫の両親、そして夫と、将来的に5人も看なきゃいけないんですよね。頼ってきた人が頼れなくなっちゃうわけだから、不安です。せめて夫が保険に入ってくれれば、経済的な負担は減るんですけど」と言っていた。

以前は、愛する人のために生命保険に入るというのが流行っていたが、これからは、愛する人の負担を減らすために認知症保険に入る時代になるかもしれない。

連載:ニュースから見る“保険”の風
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文・図表=竹下さくら

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