その法則とは、料理と飲み物の組合せは「土」と密接な関係があるということ。詳細は後述するとして、ワイン選びを簡略化して言うと、今日のメインが肉料理だったら、ワインの産地は乾燥地帯のものを。魚だったら、雨が多い地域を選びます。
ワインに詳しい方からは「そんなに単純なものではない」と怒られそうですが、要は味ではなく、ストーリー的にロジックが成立するものを選ぶという方法です。実は、これの応用編は日本酒にも当てはまります。では、そのストーリーをみていきましょう。
文化の源は「土」にある
まず、考えたいのは、その地域の経済や生活を歴史的に支えてきたのは「何か」ということです。
交通やITのようなインフラが発達する以前から、そこに人の暮らしがあるならば、その人たちは、足元の土から生み出された「産物」をお金に変えたり、食べたりするしかありません。農作物を生み出さない土だったとしても、人間は土に合わせた生活をしているのです。これが「風土」や「地域文化」を形成していく源(みなもと)です。
もう一つ考えたいことは、ワインなどの嗜好飲料品の多くは食事と一緒に食べられているということです。嗜好品は料理に合うように造られる、というより、作為なく自然と合うようになるのです。それがその土地に根付いていくことで、地域の食文化になります。
スペインを700km、ひたすら「土」を見て歩いた
私は、今から数年前に、スペインをほぼ横断する形で700kmを歩いたことがあります。人は歩く時の6割は下をみているそうで、つまり、ほとんどの時間、私は地面をみていたことになります。
本来、この道はキリスト教信者が聖地巡礼をするためのものですが、私の目的は「スペインのバル巡りをする」こと。スペイン好きが高じて、もっとディープなスペイン料理を食べたいと思い、たまたま選んだのがこのルートでした。
10kgのバックパックを背負い、足元の土をみながら「今日は何が食べられるかな? 何が飲めるかな?」と考えながら8時間ほど歩く毎日。旅の行程が半分ほどになった時に、食べ物と飲み物の「組合せの妙」は偶然ではなく必然であることに気がつきました。