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2020.03.04

ロスチャイルド家、持続の秘訣 3世紀を生きる「3つの家訓」

バロネス・シャーロット・ド・ロスチャイルド(撮影協力:東京 芝 とうふ屋うかい)

「Forbes JAPAN」2020年4月号の特集は「『10兆円の男』の教え」。

ルイ・ヴィトンからティファニーまで抱えるブランド帝国を築いたLVMH会長兼CEOベルナール・アルノーをはじめ、ロスチャイルド家7代目のシャーロット・ド・ロスチャイルド、KKR共同創業者のヘンリー・クラビス、ジョージ・ロバーツなど、世界を動かす伝説的成功者たちの「人生、経営、決断」の物語をお届けしている。

今回は、世界的金融財閥で、いまなお世界経済に影響力を有するロスチャイルド家。そのロンドン家直系の令嬢・バロネス・シャーロット・ド・ロスチャイルドが語る、21世紀型のパトロネージュの姿とは。


「もし、シャーロットさんが男性だったら、ロスチャイルド家が関わる金融において確実に頭取になっていただろう」

ご本人にお会いする以前から、複数の筋から耳にしていた所感である。ロスチャイルド家といえば、言わずもがな、国際的な金融システムを構築した世界的財閥だ。そのトップになってもおかしくはないと人々に言わしめる「シャーロットさん」とは何者なのか。

バロネス・シャーロット・ド・ロスチャイルド。1955年に生まれた彼女は、ロスチャイルド家初代の父、マイヤー・アムシェルから7代目の子孫にあたり、ロンドン家直系の令嬢である。「バロネス」とは爵位のひとつで、「女男爵」の意。ロスチャイルド家は1822年にオーストリア皇帝フランツ2世より男爵位を授与されたことから、いまなお一族すべての人間に爵位が受け継がれている。

そんな高貴、かつ、周囲が認める実力 を携えた人物とあらば、彼女と謁見叶う者 すべてを緊張させるに難くはない。だが、インタビュー当日、その淑女はチャーミングな笑顔と振る舞いで私たちの眼前に姿を現した。日本庭園の石段を一段一段、優雅に降りて来る様子は映画のワンシーンを見ているかのようであり、気品あふれるクイーンズ・イングリッシュで撮影場所となった料亭について話し始めた。「以前、ここに来たことがあるの。湯葉がとってもおいしかったことをいまでも覚えているわ」。

ロスチャイルド家の「日本人脈」


日本の近現代史とロスチャイルド家は、実は深いつながりをもつ。

「1923年の関東大震災の後、新橋―横浜間を走る電車の復旧にもロスチャイルドが援助したこと、ご存じでしたか?」。シャーロットが愛嬌たっぷりに私たちに聞いてきた。確かに、その東海道の鉄道しかり、日露戦争の戦費調達しかり、さまざまな場面で日本はロスチャイルド家から支援を受けてきた。

特にシャーロットの父、エドムンド・レオポルド・ド・ロスチャイルドは、第二次世界大戦後、ウィンストン・チャーチル首相の依頼のもと、日本政府はじめ、銀行や企業トップたちとの関係を築き、1961年から91年までの30年間という長きにわたって日本の戦後復興を支えてきた。73年、日本政府から勲一等瑞宝章を受勲した彼の家には、日本の政財界を中心とした数多くのゲストが訪れた。その際、美しい着物や漆工芸品など伝統的な贈り物が届けられ、シャーロット自身、日本への興味・好奇心を募らせたという。

ただ、こうしたロスチャイルド家の日本への貢献について、その全貌を知る日本人は決して多くはない。なぜか。シャーロットのパーソナルアシスタントの女性が教えてくれた。「彼らは、秘匿の文化をもち合わせているんです」。
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編集=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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