乾燥地帯には、何がある?
歩き始めたのは、ピレネー山脈の麓にある乾燥地帯のパンプローナ。湿り気がなく粘土質の土に生えている葡萄は、ヒョロヒョロとしたツタのような幹でした。葉の色は濃く、果実は小ぶりで濃厚。そんな葡萄から造られるワインは濃厚で力強い味わいのものでした。
広い草原には、家畜として飼われている羊がいました。実は、牛(特に乳牛)は羊の2〜3倍の量の草を食べ、大量の水を飲むため、乾燥地帯では育てることが難しい。そのためこうした土地では、強い羊や鶏、豚などがメインの食料になります。
そんな訳で、スペイン旅の前半は、羊や鶏、豚に地元のワイン(例えばリオハなど)を合わせる日々。選んでいた、というより、それしかなかったのです。幹線道路が通っていない小さな村の小さなレストランにある地元のワインは、野性味溢れる肉やゴロっとしたじゃがいも、豆料理にぴったりでした。
海が近い地域には何がある?
スペイン旅の後半1週間は、雨が多い沿岸部のガリシア地域。雨が多いということは当然、土には水分が多く含まれています。
村には小川が流れ、森は緑に溢れた豊かな植生。林檎や花梨、栗林の合間には、この旅で初めて出会った「乳牛」たちが青々とした草を食んでいました。ここの葡萄畑は、うっそうと葉を茂らせ、果実は大きくて酸味がありジューシー。すっきりと爽やかなワインが多かったです。
乳牛がいるということは、牛乳はもちろん、チーズも産業の一つになります。また、林檎などの果実からはジャムが作れるため、スイーツも含めて食のバラエティがとても豊かな地域でした。
スペイン旅の最後の1週間は、ブイヤベースなどの魚介料理に地元のフレッシュワインを合わせ、デザートにはチーズに花梨ジャムをつけていただきました。言い忘れましたが、乾燥地帯にはイチジクやベリーが自生しています。そのまま食べてもおいしい果実がレストランでは甘みの強いジャムとして出され、羊肉と一緒にいただきました。
一般的に「肉には赤ワイン」「魚には白ワイン」と言われているのは味のバランスの観点からですが、もっとシンプルで土着的な観点においてもマリアージュが成立していることがわかります。さらに言えば、濃厚なワインにドライフルーツが合い、軽やかなワインにはフレッシュチーズが合う。これも食べ物や飲み物が同じ「土質」からの産物だからでしょう。
実は、これは日本酒でも似たようなことが言えます。