日本画はもっと世界で評価されるべき
バブル崩壊以降、日本画の価値はどんどん下がっていますが、私は、日本画は世界でもっと評価されるべきだと思っています。なぜ、他国が真似できない技術の結晶とも言える日本画の価値がこれほど低いのか、私は不思議でなりません。
日本画は絹のキャンバスに、主に鉱石を砕いてつくられた岩絵具を使い、一発勝負で描いていく。油絵とは異なり、上塗りはできないので一発で絶対成功させなければいけません。もともと、岩絵具は中国発祥ですが、中国ではうまく使われず、日本に持ち込まれて日本で技術が磨かれていった。日本画は特別な技術がいるもので、欧米人には絶対できないし、中国人も途中で失敗してしまうのが関の山だと思います。実際、藝大で日本画研究室を卒業した人が一人前になるのは40歳を過ぎてからだと言われるほど、技術的に難しい。
それにも関わらず日本画の価値が下がってしまったのは、日本のバブル崩壊と、クリエイティビティ(創造性)を中心に評価するのではなく技法の継承によるヒエラルキーにより市場が形成されてしまったからです。世界で唯一のオリジナリティがあるのに、その技術を継承するために弟子が同じ技法で作品を描くことが評価の対象になってしまった結果、アートの領域から外れて工芸の領域としての評価になってしまった。
アートは、オリジナルなクリエーションに価値があるものなので、技術が継承されていくプロセスで描かれた同じような絵は、オリジナルな作品と評価されないのです。
世の中の全てのアーティストが一流のアーティストになれるわけではなく、ほんの一部の天才だけが世に出る美術作家となることができるのです。明治時代に横山大観という天才がいたのであれば、同じ時代には限られた数の天才しかない。その天才である真のアーティストは、きちんと評価されるようになるべきです。
世界で100億円以上の価値のつくアーティストが続出している今、日本が世界に誇るべき歴史の残る美術作家であれば、本来、最低でも10億円、20億円の価値をつけられて然るべき。私たち日本人が責任を持ってその価値付けをしていかなければならない責任があります。
日本のアートマーケットの課題は、日本発の日本人アーティストの作品が他の国のアートに比べて「安いけれど、市場が小さすぎて価値上がらない可能性が高い」と思われている点です。例えば、現代美術家の村上隆のことを、当時、国内では誰も理解してなかったのですが、欧米人が「これは日本のサブカルチャーを象徴する作品だ」と評価し、欧米のオークションで1億円を超える落札価格がついて、そこから世界中から注目が集まるようになり、世界中で村上隆の名前が知られるようになりました。
村上隆に限らず、海外で評価されてから日本でも評価されるパターンが一般的になっています。このような状態を続けていけば、日本国内のアートマーケットは地盤沈下したままで終わってしまうでしょう。しかし、日本には世界のアートマーケットに食い込めるだけの力はある。
日本を代表する近代美術作家のマーケットメイクを行う
Shinwa Wise Holdings提供
世界の富裕層国別ランキングを見ると、日本は上位にランクインしています。日本は世界でも有数の富裕層がいる国で、アートの取引量を増やせるポテンシャルは大いにあります。とはいえ、黙って見ていても状況は変わっていかないでしょう。
そこで私たちは100億円規模以上のアートファンド立ち上げ、日本を代表する近代美術作家のマーケットメイクを行っていきます。まず、数名の日本人近代美術作家の作品を買い支え、価値を今の価値から大きく引き上げるのです。その間、様々なプロモーションを通じて若い世代にも日本の20世紀のアートの価値を知らしめながら、価値を一層引き上げていきます。そうすると、バブルのピークから10分の1から30分の1になってしまった日本の近代美術の価値が、今の価値から10倍以上に跳ね上がる算段になります。