「はじめてギャラリーへ足を運んだとき、『呼ばれてない』感じがしたんです。いいな、と思う作品があっても、値段が書いていないし、勇気を出して聞いてみると私にはとても手が届かない金額で……自分の中に相場感や評価軸がないから、それが高いか安いのかもわからない。当時の私のように、”興味はあっても敷居が高いと感じているアートビギナー”がもっとアートを身近なものとして語ることができたら……『アートの民主化』を実現できたらいいなと考えました」。
そう語るのは、ANDARTの代表取締役社長CEO、松園詩織だ。
目指すは「アートの民主化」
ANDARTは2018年9月に設立し、2019年6月にアート作品を複数人で共同保有できる会員権プラットフォーム「ANDART(開設当時、ARTGATE)」をスタートさせた。サービス開始から約半年で、6作品のオーナー権を販売し、流通総額は7500万円を超えている。日本に暮らす人にとって、アートとの接点は美術館や美術展がほとんど。日本は世界でも有数の「アートを鑑賞する」国だ。ロンドンとニューヨークを拠点にする専門紙「The Art Paper」によれば、2018年に世界でもっとも人気を集めた美術展ベスト20のうち、日本で開催されたのは国立新美術館の「生誕110年 東山魁夷展」をはじめ4つに上る。
一方、日本で「アートを所有する」のは富裕層の一部に限られているとも言える。実際、世界における美術品の市場規模は推計674億ドル、日本円にして約7兆4000億円(「The Art Basel and UBS Global Art Market Report 2019」による)に対し、日本における美術品市場は約2460億円(一般社団法人アート東京発表「日本のアート産業に関する市場調査2018」)。世界シェアにして3.3%ほどと、世界第3位の中国の19%に遠く及ばない。
そこにANDARTが提案するのは、「一口1万円からアートを共同保有する権利を得られる」新たな選択肢だ。
「日本でアート購入がポピュラーにならない理由はさまざまです。アートに触れる機会や教育機会が少ないし、一般的に家の中で作品を飾るスペースはどうしても限られる。でも、美術館に足を運ぶだけでは、どこか精神的な隔たりがあるような気がして。『アートにお金を投じる』という体験を、少額からでも行うことによって、気軽に参入できるけれどしっかり当事者意識を持てるような関係性を創りたいんです」(松園)
ANDARTが選定したアート作品は、アンディー・ウォーホルやバリー・マッギー、KAWSや五木田智央など、現代アートを代表するアーティストによるものばかり。どんな人でも作品を観れば見覚えがあるであろう“キャッチー”なキュレーションとなっている。プラットフォーム上には、各作品のアーティストの情報、作品の背景と解説、そして会員向けには作品の市場評価と価格変動データが開示が予定されている。